福祉用具レンタル業 お客様の信頼をガッチリつかむ『先読み力』

目の前の商品だけでなく、幅広く先を読んで提案できるようになってきました!

この1年くらい、会社としてお客様の先を読んで提案することを意識して取り組んできた社長さんの言葉です。

「先読み」ができたところで目先の業績がすぐに変わるわけではありません。
ただ、「先読み」ができることでお客様からの信頼度が上がり、会社としての地力が上がり、地域で支持される良い会社をつくる一つの事例だと思います。

今回のコラムではそうした取り組みをご紹介していきたいと思います。

ポイント1:お客様の「先読み」をするとはどういうことか?

今回取り上げる会社さんは、まず業績面では非常に堅く成長しています。
県内に営業拠点を2つもち、合わせて利用者数1500名ほど。
この3年くらいでおおよそ300名ほど純増されています。

また粗利のコントロール、経費のコントロールもとても手堅く、営業利益面でも目標ラインを外すことがないばかりか、ほぼ常にオーバーパフォーマンスで推移していっています。
それというのもここ数年で整えている管理者・リーダーさんがとてもがんばっていることが挙げられます。

毎週末に営業の進捗状況を「週次レビュー」として送ってもらっているのですが、

状況に応じて進捗が遅れている部分はリカバリーの策を講じ、早め早めに手を打っていくこと
足元の数字だけでなくメンバーの育成にも目を配ってしっかりフォローアップをしていること

などから、本当に手堅く業績を伸ばしているというのがこの会社さんの状況です。

「衣食住足りて礼節を知る」ではないですが、業績が良いのを大前提として、

どんな会社を目指していくのか?

を社長と夜な夜なディスカッションしたことがありました。

そのときに出てきたのがお客様の「先読み」をするということでした。

例えばある利用者さんを想定すると、転倒して骨折されそれ以来寝室か居間のこたつからあまり動かない生活をされていたとします。
ちょっとした心境の変化があり、自分自身で家のなかを歩いて移動したい、でもまた転倒してしまうのに不安を感じています。
ふつうに考えると歩行の支えとして、歩行補助杖か歩行器が必要ということで納品することと思います。

ここまではごく普通の、当たり前の対応といえるでしょう。

歩行の支えができ、利用者さんの行動範囲が広がったとします。
それまで行かなかった箇所にも足を踏み入れることになると、そうした部分の段差が気になります。
そうした行動範囲の変化も見越して「先読み」で段差についてのアドバイスも必要になるでしょう。

また、もっともっと自分自身で歩いて行動することに慣れてきたら、次は外に出かけることも想定できることでしょう。
そうなると、玄関の環境はどうなのか?履きやすく歩きやすい靴は?外出の支えは屋外用の杖か歩行器が必要か?
そうしたことも想定していかないといけなくなるでしょう。

そうした提案が、その時に受け入れらるかどうかは別として、「先読み」して示唆、アドバイスをしていくことができる存在になることを目指しています。

福祉用具というのは、利用者が抱えている何らかの問題を解決するためのアイテムだと思います。
ただ、ひとつ問題を解決したら、その次にまた新たな問題が出てくるもの。

そうした問題を一手先、二手先まで読んでいくことを「先読み」としているのです。

ポイント2:社内メンバーの「先読み力」を高めるための取組み

世の中の多くの福祉用具専門相談員は目の前の問題を解決する視点は十分に持っていると思います。

「立ち上がりが辛くって・・・」

という問題に対しては、立ち上がり用の手すりを提案するということは十分にできるでしょう。

これが一手先を読むということになると、そこまでの視点をもっている専門相談員はぐっと減っていきます。
二手先ということになると推して知るべしでしょう。

この会社さんも同じくで、みんな直面している問題に対しては適切に選定・提案できる方が揃っています。

「『先読み』できる会社になろう!」

といっても、あまりピンとこない。

日々の営業活動のなかで「先読み」できた事例を挙げていただくようなこともやりましたが、なかなかわかったようなわからないような・・・
いつしか「先読み」はかけ声だけになり、ともすると尻切れトンボになりそうな気配も漂うようになりました。

そこで実施したのが、営業全員を集めてのケーススタディです。

各チームで「先読み」に該当しそうなケースを挙げてもらい、その事例について全員で検討することでいろんな「先読み」のアイデアを出していこうというものです。

今年に入り、営業全員でのケーススタディを3回実施しました。

1回目は、目の前のことへの対応に終始。ちょっと先の目線のアイデアはあるもののまだまだ「先読み」には至らずといった感じでした。
2回目になると、利用者さんの背景事情や介護環境を踏まえた上で少しずつ「先読み」の視点が出てきました。
3回目ともなると、かなり幅広い視点が出てきます。一手先、二手先まで見て福祉用具などハード面に限らず、利用者/ご家族の心情に配慮したソフト面のケアも考えることができるようになっています。

こうした取り組みを通じて、次のような効果があったと感じています。

繰り返し「先読み」の視点を考えることで、思考のトレーニングを行うこと
1人で考えるよりも複数のメンバーで考えることで思考の幅が広がること
個々人だけがもっている情報・知識・視点を営業メンバー全員で共有できるようになること

ケーススタディといういわば机上の思考はできるようになりました。

あとは、こうした考え方が実際に現場で使いこなせるようになってくると、利用者/ご家族、またケアマネに対しても価値を与えることができるようになるでしょう。

ポイント3:お客様に提供できる価値を高めよう!

先ほど、利用者/ご家族、またケアマネに対して価値を与えることができると書きました。

そんな「先読み」なんてやって何になるの?
面倒なことが増えるだけで売上なんて上がらないんじゃないの?

そんな風に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

営業が提供できる価値とは何でしょうか。

私は、お客様の問題を解決することが営業の価値だと思います。

お客様の問題には、顕在的(目に見えている)問題と、潜在的(奥に潜んでいる)問題の2種類があります。

顕在的問題とは、まさに目の前で直面している問題です。
例えば、立ち上がりが不安定とか、扉の開け閉めの際にふらつくとか、浴槽のまたぎで転倒しそう・・・とかです。
問題が目に見えているということは、半ばお客様が必要なもの≒答えを言ってくれている状態といえるでしょう。

そうした目に見えている問題を拾ってそれを解決する商品を提供することはたやすく、言い換えると「御用聞き営業」といえるでしょう。
「何か御用ありますか?」
「あーそうそう、ちょうどお醤油切れてるから持ってきて。」
「へい、毎度あり!」

こうした御用聞き営業は誰でもできます。
誰でもできることにはなかなか価値は生まれづらく、持ってきてくれるスピードがちょっとだけ早いとか、人当たりがいいとか、値段が安いとか・・・
差がつくのはそんなところにとどまります。

一方で潜在的問題とは、お客様自身も気づいていないような問題です。
お客様の意向を深いレベルで聞いていったり、先を予測して直面するであろう問題をあぶり出すことで、お客様もようやく認識するようになります。
当初はお客様も気づいていないことなので、提案の幅は広く、またお客様との関係は長期的なものになりやすいものでしょう。

「お客様の真のニーズをつかむ」とか「提案営業をするんだ!」というのは、こうした潜在的問題にリーチすることができると実現できるようになります。

お客様にとって、

自分が言ったことをやってくれる営業か、
言ってもいないことを先読みして提示してくれる営業か、
どちらがより大きな価値を提供しているでしょうか?

自社のビジネスにとって、

言われたことだけ商品提供している営業か、
将来の予測から幅広く、より長期的に提案をしている営業か、
どちらがより大きな価値を創出してくるでしょうか?

より大きな価値を生み出すことができる営業になりたいなら、
また、より大きな価値を提供しマーケットでの自社のポジションを高めていきたいなら、
今回ご紹介した「先読み力」を高める取り組みをご参考にしていただければと思います。

私自身もみなさまの経営の将来の姿を「先読み」して提示していけるよう、研鑽を積んでまいりたいと思います。

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
シニア経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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