福祉用具レンタル業 人材採用難のいま、新卒採用に踏み切るべきか!?

ウチもそろそろ新卒採用を検討するべきなんだろうか・・・?

福祉用具レンタル会社が成長してきて、ある程度の段階になったらこうした岐路に直面することだと思います。
それまでは採用といえば中途採用、30代~40代くらいの人材を採用していたものが、
昨今の採用難にも直面し、またより若くてフレッシュな人材をと考えたときに新卒採用も選択肢にすべきかどうか。

迷うところですよね~!

今回のコラムでは、福祉用具レンタル会社が新卒採用に踏み切るべきかどうか、みなさんと一緒に考えてみたいと思います。

ポイント1:中途採用か?新卒採用か? それぞれの特徴を整理してみよう!

多くの福祉用具レンタル会社では人材採用といえば中途採用で、新卒採用なんて考えたこともなかったいうところもあるのではないでしょうか。
まずは中途採用と、新卒採用、それぞれの特徴を整理してみたいと思います。

<中途採用>
・採用といえば当たり前のように中途採用と考えられている
・ある程度の社会経験を積んでおり、基礎的な社会人常識をもっている
・いろいろな職種、さまざまなバックボーンの人材である
・一般的に採用コストは低い
・これまでの職歴によってクセがついている
・何度も転職を繰り返している人もいる

こんな特徴でしょうか。
ザックリ言うと、採用コストが低く比較的手軽に採用できてある程度社会人経験があるけど、経歴によってはクセが強いこともあるという感じでしょうか。

<新卒採用>
・高卒であれ大卒であれ、かなり若いメンバーを採用することになる
・どこの色もついていないので理念やビジョンをイチから共有しやすい
・経験ではなくポテンシャルを見極めて採用する
・社会経験がないので、名刺交換のやり方などゼロベースで教える必要がある
・新卒向けの採用フローがあり、難しそうに感じる
・新卒採用のやり方を考えるとコストがかかりそうに感じる

こちらもザックリ言うと、若くてピュアなメンバーを採用できる一方で、採用フローや採用コストなどになじみがない、またゼロベースで教育が必要になる。

当然のことながら、どちらが良くて、どちらがダメということはありません。
それぞれにメリットとデメリットがあり、会社がおかれた状況に応じてしっくりくる採用方法を進めていくということではないでしょうか。

一般論になりますが、企業規模が大きくなると中途採用から新卒採用にウェイトを移していくところが多いように思います。
その切り替えは一つのターニングポイントであり、企業の歴史のなかで大きな区切りとなるでしょう。

例えば、ある程度まで成長し、そろそろ新卒採用にチャレンジしていこうかという会社があったとします。
どうすればいいのかわからず、手探りで採用活動を行い、ようやく新卒社員を入れたとしても数か月~1、2年で退職してしまうというのもザラにある話です。

入社してきた新卒社員にとっては、周りを見渡すと若くて30代から、40代・50代の年の離れた社員ばかり。
気軽に相談したり、気の置けない仲間ができるかというと、けっこう難しい話というのは想像に難くないですね。
そうこうしているうちに「ここは自分がいる場所じゃない!?」という気持ちになって、退職という選択をしていくパターンです。

新卒採用にチャレンジしても、入れては辞め、入れては辞め、そのうちにある時点でずっと残ってくれるメンバーが出てきます。
そうするとその次の新卒メンバーも定着するようになり、そのまた次の年次のメンバーも根付いていくようになります。
「ちょっと上の兄貴分・姉貴分的な先輩の存在」
というのが新卒採用が定着していく上で重要になる傾向があるようです。

そんなこんなで、やがては新卒採用がしっかりと根付いていくうちに、会社の中の雰囲気は気づけばガラリと変わっているということになっていくことでしょう。

はたして福祉用具レンタル会社が新卒採用に踏み切るべきかどうか、みなさんはどう思いますか?

ポイント2:20年前から新卒採用に取り組む会社の事例

福祉用具&リフォーム経営研究会の会員企業で株式会社シルバーとっぷという会社さんがいらっしゃいます。
千葉県ではかなり有力な会社さんなので、ご存じのかたもいらっしゃると思います。

先日、シルバーとっぷ様にお伺いしていて外山社長にあれこれお話をお聞きしていました。
現在約120名の社員のうち、半数は新卒採用の社員だそうです。

なんと!20年も前から新卒採用に取り組んでおり、継続して新卒社員を入れているとか。

いまから20年前というと、介護保険での福祉用具レンタルが始まり数年が経った頃、業界としてはグングン伸びる成長期を謳歌し、シルバーとっぷ様も利用者数2000名に迫る勢いで突っ走っていたそうです。
利用者数1000~2000名というと、無我夢中に伸ばしていく時期を過ぎ、そろそろ将来に向けて会社をどうしていくか考えていく時期にも差し掛かります。

外山社長は、お客様に心の底から認めていただけるサービスが提供できる会社にしたいと考えていたそうです。
お客様は言うまでもなく、高齢の利用者です。

いくら身体機能や認知機能が低下しているとはいえ、自分たちよりもうんと人生経験を積んでこられている方ばかり。

たとえいくら口先で良いことばかり言っていたとしても、腹の奥底にある思惑はあっという間に見透かされてしまうと考えました。
「うまいこと言いくるめて売ってやろう!」
そんな気持ちがあると、目玉に「¥」マークがちらついているようなものであり、そんなことはお客様はお見通しなんだと。

自分たちの考えを、よりノイズの少ない状態で入社した瞬間から浸透させていくには、新卒社員を採用していくのがフィットしていると考えたそうです。

それ以来、20年間ずっと新卒メンバーを入れ続けています。
ご多分に漏れず、いろいろな苦労もあったかと思います。
平成の時代には深夜まで働くということも往々にしてありましたが、時代の変遷とともに働く環境も改善し、社員の処遇も頻繁に見直しをかけ、現在に至ります。

みなさまは「openwork」というWebサービスをご存じでしょうか。
転職・就職のための情報プラットフォームとして、在職社員や元・在職社員が企業の口コミ情報を投稿していくWebサービスです。
要するに、どんな会社なのか口コミによってよりリアルに近い情報が公開されている情報サービスと理解していただけると良いかと思います。

openworkによると、シルバーとっぷ様のスコアは4.10、上位1%という表記があります。
ちなみに福祉用具レンタルの大手3社はだいたい3.0近辺、業種は異なりますが某F総研さんは3.48とあります。
こうして考えると、4.10というスコアがかなりスゴイものだということがわかるでしょう。

ちなみにシルバーとっぷ様の業績はというと、年商20億円で、創業以来36年間ずっと黒字経営、2022年に1度だけ損失を出していますが、それは意図して赤字にしたものだそうです。
というのも、今後の物価高騰、原価高騰を背景にメーカー/卸からの仕入れ価格が上昇していくことを見越して、自社レンタル商品を相当量買い越し。
その分を費用計上したため、一時的に損失を計上したもので、意図した赤字決算を一度だけ出したというものです。

お客様への質の高いサービスを追求し、そのために採用方法を新卒主体に切り替え、継続的に利益を出し続ける、正真正銘の「良い会社」なのだと言えるでしょう。

ポイント3:新卒採用を進めるならこのポイントを押さえよう!

人材採用環境が厳しくなる昨今、新たな人材募集領域として新卒を視野に入れるというところもあると思います。
今後、みなさんの会社が新卒採用を進めていくのであれば、以下のポイントを押さえながら進めていただければと思います。

①会社のビジョンを明確に定める

シルバーとっぷ様の事例にみるように、将来にわたり会社をどのようにしたいのか、ビジョンを定めるのは超・重要なポイントです。
新卒(に限らずですが)社員サイドから考えると、働く場所を探すということは、大げさかもしれませんが、自分の人生を預ける場所を探しているようなものだと思います。
企業の「いま」の姿も重要ですが、将来どんな会社になっていくのか、どんな夢や野望を抱いている会社なのか、入社する社員側も見極めながら就職活動を行っています。
これまでの社員も、これからのメンバーも、一緒に創っていく会社の未来像をイメージしていくと良いと思います。

②育成の仕組みを整えていく

新卒社員は良くも悪くも「真っ白」です。
名刺交換のやり方も、先輩・上長への口の聞き方も、メールの送り方も、電話の受け方も、何もかも知りません。
そうした一般常識もそうですし、お客様のところでの立ち居振る舞いやマナーなんかもゼロから教えていく必要があるでしょう。

そうしたときに「オレのやり方を見て覚えろ!」というのが通用しないというのは、みなさんお分かりですよね。
当たり前と思えることからマニュアルを整備して、親切丁寧に研修を実施していくなど、育成の仕組みを整えていくことも必要になります。

③退職者が出ても折れない

一生懸命に育成して、優しく温かく面倒を見たとしても、残念ながら退職者は出るものです。
なかには新卒採用をはじめて3年くらいは誰も残らず、4年目くらいでようやく1人残ってくれたという会社さんもあるくらいです。
いまのご時世、辞めるのは当たり前、退職でいちいち心が折れていてはやってられません。
「辞めるものは辞める」とある意味で割り切りつつ、一方では定着が進むような社風づくりや育成の仕組みづくりを進めていくことでしょう。

当初はいろいろと勝手が違うので苦労することもたくさんあると思います。
でも、いつしか新卒社員が定着するようになり、気づけば会社のなかの半数以上が新卒社員という、新卒主体の組織になっている未来がくることでしょう。

あくまで私の感覚ですが、新卒社員の方が将来の成長曲線は大きく伸びると感じています。
入社して数年は成長まで時間がかかる時期がありますが、ある時点からグングンと成長していく。
ジェット機が助走期間を経て、ひとたび地面からフワリと離陸すると、どんどんと高度を上げていくようなものだと思います。

これから「良い会社」にしていきたいとお考えの社長さん、どんどん会社を成長させていくイメージをお持ちの社長さん

新卒採用にチャレンジすることも一考ですね!

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
シニア経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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