福祉用具レンタル業 上限価格制度はいつまで続くんだろう・・・?

いろんなモノの価格が上がって、それでもレンタル料金は下げるしかなく、時代に反してますよね・・・

多くの福祉用具レンタル会社の経営者、運営管理者から聞かれる声です。
激しく同意する!という方は非常に多いのではないでしょうか。

なんだか、いつの間にやら「当たり前」になりつつあるレンタル料金の上限価格制度について、あらためて考えてみたいと思います。

ポイント1:物価も賃金も上がるばかり…でもレンタル価格は!?

日々、消費者として生活するなかでも、いろんなモノの価格は上がっているなと感じますよね?

非常にタイムリーなお話でいくと、スーパーの棚からお米が消えたというのは記憶に新しいことと思います。
最近でこそ、各地で稲刈りがはじまり新米が流通しだしたので、スーパーにもお米が戻ってきました。
とはいえ、お米の価格は高止まりしていて、10kgで6000円を超えるという話も珍しくありません。

生活者としての実感としても、いろんなモノの価格が上がっていると感じますが、会社経営でもいろんなモノの価格は上がり続けています。

例えば、物価全般を考えてみましょう。

国内企業物価指数という数値がありまして、
2020年を100とすると、2023年は120だそうです。
2020年から1.2倍にさまざまな企業物価が上昇しているということになります。

次にガソリン価格について。

福祉用具レンタル会社の経営において、営業や納品に使う車輛のガソリン価格はコストの主要項目だといえるでしょう。

あるサイトのデータによると、
2020年1月のレギュラーガソリン現金価格が147.6円/L
対して2024年7月の、同じくレギュラーガソリン現金価格は172.1円/Lだそうです。

2020年1月を100とすると、2024年7月は116.5となります。
2020年から1.16倍にガソリン価格が上昇しているということになります。

はたまた賃金について。

厚生労働省の「毎月勤労統計調査」からデータを加工して、月間現金給与総額(事業所規模30人以上)を見ると、
2020年:365,100円に対して、2023年:386,982円となります。
2020年を100とすると、2023年は106ということになります。
2020年から1.06倍に賃金水準も上昇しているということになります。

物価は1.2倍になり、
ガソリン価格は1.16倍になり、
賃金水準も1.06倍になっています。

ものすごくザックリですが、福祉用具レンタル会社の経営に置き換えると、

仕入や支払いが上がり、
クルマを走らせる燃料費が上がり、
社員の給料も上がっている。

いろんなモノの価格が上がっているということになりますね。

一方で、福祉用具レンタル価格はどうでしょうか。

2018年10月からはじまった「福祉用具貸与価格の上限制度」によって、定期的(最近は3年に1度)に、

全国平均貸与価格+1σ(標準偏差)

を上限価格として、その上限価格を超える商品については、保険給付対象外とすることになりました。

これによって全国の福祉用具レンタル会社では、上限価格を超えないようにレンタル料金の調整を行っているというのは、わざわざ私が言わなくてもみなさんの方がよくご存じのことでしょう。
上限価格に合わせてレンタル料金の調整を行うことで、数十万円から規模によっては数百万円の売り上げダウンに見舞われている事業者もいらっしゃると思います。

ものすごく一般論ですが、

商売とは売上を上げて、仕入・支払いを抑えることで利益を生み出すのが企業家に課せられた使命です。

仕入・支払いは上がる一方で抑えるのは非現実的であるのに対し、
売上を上げようにもレンタル料金が国によって定期的に下げさせられるというのは極めて異常と感じます。

いったいどうなってんねん!?

と疑問を感じずにいないのは私だけではないと思います。

ポイント2:「営業の自由」はどこへいったのか!?

もともと上限価格制度が設定されたのは、一部に高額な貸与価格を設定する「外れ値」の存在があったから・・・

そんなことはわかってます!

それ以前はレンタル料金は事業者の自由価格制とされていて、各エリアでの市場競争によってじわじわと低下しているものでした。
ただ、一部に競争がほとんどない地域での高額なレンタル料金設定や、施設入居者に対して他に選択肢がないなかで高額なレンタル料金で貸与していたなどの「外れ値」があったと言われています。

これまた一般論ですが、世の中にはそれを選ぶしかない、または逃げられない状況のなかで、法外な料金設定をする例がたびたび発生します。

例えば、記憶に新しいコロナ禍初期のマスク不足の状況における転売とか。

例えば、繁華街でのぼったくり飲み屋さんの存在とか。

あり得ないくらい法外な値段をつける悪質な事例はたくさんあるのですが、国としてはこれにあからさまに規制をかけることはしていません。
マスク転売にしても出品者の料金に対して罰則で縛ることはできず、モールを運営するプラットフォーマーに対して出品規制やパトロールを行うことしかできません。

ぼったくりバーにしても、市区が条例で対応しているケースはあるものの、
・客引き行為の禁止
・事前の価格提示の義務付け
などを設定していますが、高額な料金そのものを規制するものではないものになっています。

酔っ払ってぼったくりバーのお兄さんとモメて警察へ駆け込んだとしても、お店側が「ちゃんと説明しました。」と言えばお巡りさんとしては、
「払うしかないですね~」
としか言えないそうなので、ご注意ください。

そんなのおかしいじゃん、そういう奴らこそ規制しろよ!
と思うのが人情ですが、憲法には「営業の自由」というものが規定されています。

法のことは深く学んでいないので、少し調べた程度でしかないのですが、
日本国憲法の第22条 職業選択の自由と、第29条 財産権の保障を根拠として、営業の自由が認められています。

転売ヤーであろうが、ぼったくりバーであろうが、こうした憲法の営業の自由によって、規制されたり取り締まりを受けたりすることがないのです。

話は戻って、福祉用具レンタル会社は、営業の自由はありながらも、貸与価格の上限制度によってレンタル料金の規制を受けています。

なんだかおかしな話ですね。。。

ポイント3:上限価格制度も柔軟に見直しが必要ではないか?

憲法で認められている「営業の自由」もときに制約を受けることがあるそうです。

例えば、国民の生命や健康に対する危険の防止
例えば、国民経済の円満な発展
例えば、社会公共の便宜の促進
例えば、経済的弱者の保護
など

例えば、昔々のオイルショックのときのように、異常な物価高騰の際には「国民経済の円満な発展」のために制約されることもあると思います。

今回の「福祉用具貸与価格の上限制度」についても、「社会公共の便宜の促進」や「経済的弱者の保護」のためかどうかわかりませんが、そうした大義のために制定されたものというのは理解できます。
確かに、他に選択肢がない状況や逃げられない状況で、法外なレンタル料金が設定されていたというのは、規制されてもやむを得ないかなと思います。

しかし、それも全体のうちのどのくらいの事業者なのでしょう。
おそらく1パーセントにも満たない、ごく少数の事業者なのではないかと思います。

当初はそうした事業者による極めて高額なレンタル料金を是正するという役割があったことは十分に理解できます。

ただ、もうそうした役割は十分に果たしたのではないでしょうか。

まして、いろんなモノの価格が上昇しているこの局面です。
国家としてもインフレターゲットを設定して企業の収益力を高めるとともに、賃金上昇を誘導し国民の生産性を高めようとしていることでしょう。

十分に役割を果たし、時代にそぐわなくなっている「貸与価格の上限制度」はそろそろ見直しをしていくことが必要なのではないかと思います。

と、そんなことをこのコラムでいくら言っても誰にも届かないことは重々承知しています。
それでも、誰かが声を上げていかないと、例え小さな小さな声であっても、声を上げていかないといけないと思い、今回のコラムを書かせていただきました。

もっともっと業界の声を代弁できる存在になれるよう、これからも声を上げてまいりたいと思います。

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
シニア経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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