福祉用具レンタル業 レンタル商品倉庫の劇的改善事例!

商品を探して倉庫をウロウロすることがすっかりなくなりました!

この1年、レンタル商品の倉庫、また洗浄・消毒センターの改善に取り組んでこられた会社さんで、見違えるように成果を挙げられました。
取り組んだことひとつひとつは地道なことですが、地道だからこそしっかり確実に成果を出されたのだと思います。

今回のコラムでは、この会社さんの取り組み事例についてお伝えしてまいりたいと思います。

ポイント1:モノがない!?倉庫を探すこと数時間・・・

この会社さんは福祉用具レンタルで、自社商品でのレンタルをされています。
営業は2拠点、本社にある商品倉庫からもう1拠点へは商品を運び、自社レンタルとして回しています。

「なんかレンタル粗利率がどんどん下がってない!?」

月次の数値を見ていて、異変を感じたのは1年以上前のことでした。

もともと70%を超えていたレンタル粗利率ですが、70%を割り込む月もちらほら目立つようになりました。
よくよく調べてみると、自社レンタルでありながら、レンタル卸に発注することが増えているとか。

自社レンタルの会社さんでも、100%自社商品ということはあり得ません。
例えば、自社で取り扱いのない商品とか、レンタルの頻度が低い商品などは、卸さんの力を頼ってレンタルしているという会社は多いと思います。

ただ、自社で保有している商品にもかかわらず、レンタル卸に発注するというのは合点がいきません。

営業担当者に聞いてみると、

「自社の商品センターで手配しようとしたら、担当者から『在庫がありません。』と言われました。」

センターの担当者に聞いてみると、

「システム上は在庫ありになっていても、現物を確認すると商品がなくって・・・」

そんなこんなで、あるはずの商品が倉庫にないため、やむなくレンタル卸に発注していたとのことでした。

こうした現象は実は意外と「あるある」です。
あると思っていた商品がなかったので、卸会社から手配してレンタルした
あるはずの在庫がないため、新たに発注して商品を仕入した

後日、棚卸のときに商品が見つかって、卸に発注することも、商品仕入れをすることも、実はやらなくてもいいことをやってしまっていたということが起こり得ます。

レンタル卸に発注するのも、商品を仕入するのも、利益率を下げたりキャッシュフローを悪化させたりと、経営上はとても重大な問題になっていくのですが、

営業担当者にしても倉庫の担当者にしても、目の前の納品をなんとかしないといけない。
倉庫を探しても「ないものはない」ので、なんとかするために発注してしまっている。
そんな状態になってしまいます。

ほかにもいくつか問題として起こりがちなこととしては、次のようなことが挙げられます。

・自社倉庫からの商品が汚れていたりしてクレームになる
・ベッドを組むときに付属の部品が入っておらず、現地で組み立てられない
・手配したものと違う商品が届いた
・倉庫がゴチャゴチャしていてどこに何があるかわからない
・困ったときはセンターの「職人さん」みたいな人に言ってなんとかしてもらう

せっかく自社レンタルでやっているのに、このままではどんどん利益を食われていってしまう・・・
危機感を感じたこの会社さんは、商品センターの改革を進めることになったのでした。

ポイント2:同業他社の見学から商品センター改革のヒントを得る

さて、改革を進めるとはいったものの、実際にどう進めていいのやら。

その会社の社長さんから相談を受けた私は、同業他社に見学に行ってもらうことをご提案しました。

西日本の会社さんなのですが、東日本で倉庫や洗浄・消毒・メンテナンスをしっかりやられている会社さんに見に行きましょう!と。
どういう風に改善すればよいか、改革を行ってどんな風になるのか、イメージがつかないことにははじまらないでしょう。
実際に目で見てもらって、完成形のイメージができれば、そこにどう近づけていくか、実行策も湧いてくるというものです。

いまからちょうど1年前の2023年の秋、新幹線を乗り継いではるばる見学に行っていただきました。

そこで目にされたのは、自社よりもはるかに整理・整頓が行き届いた倉庫スペースでした。

・カゴ台車にはベッド1台分のセットを積載
・それぞれのカゴ台車には機種名を明記したカードを見えるように掲示
・車いすの倉庫スペースには機種ごとに置き場所が決まっている
・部品など小物もトレイ(引き出し)に入れ、テプラで明示されている
・掃除用のモップなども置き場所が決まっていてキレイに置かれている

などなど

また、洗浄・消毒・メンテナンススペースも様々な工夫がありました。

・工具箱や工具台車もすべて置き場所が決まっている
・作業台は除却済みのベッドを利用して高さを上下できるよう改造したものを使用
・出荷前の点検チェックリストで不具合を消し込み
・商品1つ1つが、返却、洗浄中、倉庫、貸出中などステータスがわかるようになっている
・メンテナンススペースは明るく、海外のガレージのような楽しくオシャレな雰囲気

などなど

見学してもらった結果、参考になることが山ほどあり、現地で撮影した写真や聞き取りのメモでたくさんのお土産ができました。

それらを、

①明日からでもスグに取り入れること
②しっかりと段取りをつけて取り入れること
③本腰を入れて改革していくこと

3つくらいのレベルに区分けして、それぞれ実行スケジュールを決めて取り組みを進めていきました。

自分たちよりも先を行っている会社を実際に見学しに行くこと。
そこで、自社とのあまりの違いにショックを受けること。
改革を進めた先の完成形のイメージを目に、脳裏に焼き付けること。

やはり百聞は一見に如かずで、この同業他社の見学があったからこそ、本気で改革を進めようという一歩を踏み出すことができたのだと思います。

ポイント3:まずは「5S」が重要!地道な努力が大きな改善を生む!

改革していくことのうち、やはり大きなところは「5S」に尽きると思います。

整理・整頓はもちろんのこと、一つ一つの置き場所を決める「定物定置」と置き場所の明示。
そうして整然となった状態を維持するための清掃やしつけなど。
「5S」に詳しい指導員の先生にも来てもらって進めていかれました。

「5S」のひとつひとつは地道な作業の積み重ねだと思います。

工具や道具のそれぞれの置き場所を決めたり、膨大なアイテムのそれぞれの置き場所にカードをつけていったり。
なかなか時間と根気を要する作業であり、もしかするとこんな風に思ってしまうかもしれません。

「こんなのやって本当に変わるの!?」

でも、こうした地道な取組みをしていったからこそ、大きな改善につなげることができたのです。

もともと生じていた課題はそれぞれこんな風に変わっていきました。

・システム上の在庫は、倉庫に現物がありムダな発注や仕入がなくなった
・出荷前検査をすることで商品の不具合や汚れが解消した
・ベッドなど複数のパーツ・部品は1セットで管理するので欠品がない
・倉庫がスッキリし、何がどこにあるか一目瞭然でわかる
・作業内容が標準化されたのでみんな適正に作業ができる

やはり大きいのは「あるはずのものがない」という状態が解消したことだと思います。

在庫管理上の商品と、実際に倉庫にある現物が一致しているようになりました。
商品がないからレンタル卸に発注するとか、商品が無いと思って新たに仕入を起こすということがずいぶんとなくなっています。

現場でのそうした変化が明確に実感できるようになっています。
あとはその結果として、自社比率が上がり、粗利率が改善していく効果はこれから見込んでいくことができるでしょう。

今回のコラムでは、レンタル商品倉庫の劇的改善事例ということで自社レンタルの会社さんのエピソードをお伝えしてきました。

なんだウチは自社レンタルじゃないから関係ないやん・・・

そう思った方はとてももったいない!

同じような場面を転用して考えて、改善ができるケースなんて山のようにあります。
例えば、卸レンタルの会社さんでも商品の置き在庫はどうでしょう?住宅改修の部材の在庫はいかがですか?
もっとミクロな視点でいえば、机の上には未処理や処理済みの書類が無差別に乱雑に積み重なっているかもしれません。
営業車の軽バンの荷台には、どこに何があるか明確にわかりますか?

ちょっと挙げただけで、いろいろなことが考えられます。
問題を問題として直視して、地道な取り組みを積み重ねることで、劇的な改善につながるものです。

そんな風に捉えていただければうれしいかぎりです。

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
シニア経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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