- 2024.12.13
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福祉用具業界の時流
福祉用具レンタル業 2025年以降の業界時流と持続的に成長する企業づくりのポイント
INDEX -
2025年以降の福祉用具レンタル業界はどのように進んでいくの!?
2024年も年末に差し掛かったこの時期、みなさま気になるところだと思います。
今回のコラムでは、業界の動向を市場データで振り返るとともに、2025年以降どのように考えて経営を進めていくべきか、また将来にわたって持続的に成長していくための考え方についてもまとめてみたいと思います。
ポイント1:データで見る福祉用具レンタル業界
まずは市場データで見る福祉用具レンタル業界についてです。
福祉用具レンタル業界の市場規模
業界の市場規模について、厚生労働省より公表されている「介護保険事業状況報告」を見てみます。
このデータより、福祉用具貸与の費用額の推移を2002年~2022年まで見てみると、2022年の全国の費用額は4133億円ということになります。
2002年にはおよそ1000億円程度だったことを考えると、20年間で4倍の市場規模になっています。
また対前年比では105%の成長であり、市場全体としては堅調に成長しているということになります。
余談ですが、フェルミ推定というものをご存じでしょうか。
まったく答えがわからないものを、いくつかの既知のデータや推測値をもとに推定していく方法をフェルミ推定といいます。
会社の入社試験などでも出題されることがあるそうですが、例えば「日本全国の電柱の数を推定せよ」みたいな感じです。
福祉用具レンタル業界の市場規模について、フェルミ推定をしてみると、、、
日本の人口:125,000千人
高齢化率:30%
介護保険認定率:20%
福祉用具利用率:40%
これらのおおよその数値から福祉用具利用者数を3,000千人と見積もります。
福祉用具貸与平均単価:12千円
1年間の月数:12か月
そうすると、432,000,000千円と計算されます。
4320億円、データ上では4133億円ということですが、ほぼ近い値が導き出すことができたと言えるのではないでしょうか。
「200億円もズレてるじゃないか!」
と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、おおよそのデータを使って「だいたい4000億円くらい」というのは十分に「ほぼ当たっている」と言える範囲ではないかと思います。
福祉用具利用者数と福祉用具利用率
実際の福祉用具利用者数は256万人だそうです。
また、介護保険認定者数が707万人であり、福祉用具利用率を算出すると37.1%ということになります。
利用者数の年平均成長率
2020年~2023年の都道府県別の利用者数の年平均成長率を出してみました。
全国平均は103.5%であり、地域によって全国平均を上回っているところ、下回っているところ、さまざまです。
事業所数と福祉用具専門相談員数
2022年に福祉用具貸与事業所数は7900事業所になりました。
また福祉用具専門相談員の数は、35400名いるそうです。
35400名を7900事業所で割ると、1事業所あたりの専門相談員数が出てきます。
これは4.5名となりますが、みなさんの事業所はいかがでしょうか。
いくつかの数値指標を通じて市場データを見てきました。
こうした市場データを通じて、ざっと業界の状況を概観し、業界の動向を大づかみしていただけると幸いです。
上記で触れたことも触れていないことも含めて、業界の動向としてざっくり要約しておきたいと思います。
▶福祉用具貸与の費用額では年率105.0%の伸び、福祉用具利用者数では年率103.5%の伸び
▶福祉用具利用率はコロナ期にグンと上がった。在宅シフトが起こった影響か?
▶都道府県によって利用者数の増減はさまざま。市場縮小が進んでいるエリアも多い
▶都道府県によっては事業所数の減少も見られる。市場縮小とプレイヤーの退出か!?
ポイント2:企業規模別の課題と方向性について
ここでは利用者数レンジによって企業規模別に、課題と方向性についてまとめておきたいと思います。
もちろん、各社によって抱える課題や、これからの方向性はさまざまなものがあると思います。
最大公約数的に、おおよその目安のような感じで捉えていただければうれしいです。
利用者数500名くらいまでの課題と方向性
課題 | 方向性 |
・利用者数が伸びない ・営業力に乏しい ・営業のやり方がわからない | ▶まずは営業力を高める ▶ケアマネ営業を仕掛けられる意識と組織体制づくり |
利用者数1000名くらいまでの課題と方向性
課題 | 方向性 |
・利用者数が伸びない ・人(営業)が増えず、業績を伸ばせない ・採用したいが投資余力に乏しいので、思い切った採用ができない | ▶営業の勝ちパターンを確立する ▶収益性よりも成長性重視で投資 ▶資金を確保してCFを見ながら人的投資を続ける |
利用者数3000名くらいまでの課題と方向性
課題 | 方向性 |
・利用者数が伸びない ・既存拠点だけだとシェアの伸びしろがなく頭打ち ・拠点を展開したいが人がいない、店長を任せられる人材がいない | ▶営業の勝ちパターンをコピー&展開 ▶店長/リーダー人材の育成 ▶組織階層に応じた人事制度づくり |
利用者数10000名クラスの課題と方向性
課題 | 方向性 |
・個々の戦闘力が弱い ・飛びぬけた人がいない「羊の群れ」になってしまっている ・拠点を分散しすぎて一つ一つが浅く広くになってしまう ・組織が大きいため勝ちパターンづくり、展開に時間がかかる | ▶拠点単位の営業力の見直し ▶拠点とエリアの見直し、統廃合など「選択と集中」 ▶戦略&組織の変革を進め、フットワークを取り戻す |
前提として、遠からぬ将来に必ず市場縮小に至る局面がやってきます。
福祉用具レンタル会社の大きな方向性としては、
市場縮小が起こる前に各地域で上位のポジションを確保しておくこと
と捉えていただきたいと思います。
ポイント3:持続的成長のために必須の要素とは?
世の中には、大きく2つのタイプの会社があります。
一つは、社内外の変化がとても激しい会社
もう一つは、あまり変化がなく平穏が続く会社
はたしてどちらの会社がいい会社と言えるでしょうか!?
変化が激しい会社は、社長が会社を変え続けるケースがほとんどです。
次々に新しいことに取組み、めまぐるしくやっていること、会社の中のやり方、ルールや組織が変化していきます。
社員にとっては、変わることは日常茶飯事であり、
「また社長がなんか新しいこと言ってるわ・・・」
と半ばあきらめとも、呆れとも取れるような言葉が交わされることでしょう。
一方で、変化がなく平穏が続く会社はいかがでしょうか。
こうした会社はそもそも社長が変化することを避ける傾向にあります。
何か新しい情報やネタがあったとしても、「ウチには合わない。」「いまはその時期ではない。」となんだかんだ言って変えることを選択しません。
社員も何か新しいこと、
例えば「営業スタッフにスマホを装備させたい」みたいなことを起案したとしても、なんだかんだ言ってその起案が通ることはありません。
「通信料が高額になる・・・」
「スマホを与えるとサボって仕事をしなくなる・・・」
「セキュリティ面で心配が・・・」
みたいな感じでしょうか。
そのうちに社員はこう思うようになることでしょう。
「ウチの会社は何を言っても無駄・・・」
そう思い、あきらめの気持ちになり、向上心のある人材はやがて会社を去っていくようになる。
そんなシナリオが見えてきます。
そう考えると、社長自身が会社を変え続けることが重要で、どんな小さなことでも会社を変えることを継続すること。
社長が「会社を変える」かどうかが持続的成長を決める!
と言ってまったく過言ではないでしょう。
誰が言ったか、
成功の反対は失敗ではない。
成功の反対はチャレンジしないことである。
という言葉があると思います。
みなさまの会社が小さくても変化を続け、また小さくてもチャレンジを継続し、持続的に成長する企業となることを願ってやみません。
来る2025年に向けて、今回のコラムが少しでもご参考になれば幸いです。
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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
シニア経営コンサルタント
入江 貴司
【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。
⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp