福祉用具レンタル業 ケアプランデータ連携システムは広がるのか・・・!?

やるよ、やるよ、と言われてはや2年になるデータ連携システム

みなさまの事業所での導入状況はいかがでしょうか?
はたまた、実際に取引のある居宅・包括とのデータ連携の活用状況はいかがでしょうか?

ケアプランデータ連携システムの現状について見ていきたいと思います。

ポイント1:ケアプランデータ連携システムの普及状況

ケアプランデータ連携システムに関しては、6月からフリーパスキャンペーンというものがはじまり、年間21,000円のライセンス料が1年間無料になるそうです。
2023年4月からスタートしたケアプランデータ連携システムですが、あまりにも進んでいかないので、利用促進キャンペーンがはじまるということでしょうか。

そもそもケアプランデータ連携システムとは何なのか?

公益社団法人国民健康保険中央会の資料を見ると、、、
介護現場の負担軽減や職場環境の改善が期待できるシステムとして、2023年4月20日より『ケアプランデータ連携システム』 が本格稼働しました。居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所とのケアプランのやりとりを、オンラインで完結する仕組みを構築しました。

とあり、居宅介護支援事業所と居宅サービス事業所が予定と実績をデータ連携システムを介してやり取りをすることで、

①紙の書類のやり取りが代替される
②記載ミスや書類不備がなくなり正確性が上がる
③業務時間や費用の削減につながる

というものです。

では、実際にどのくらい使われているのか、見ていきたいと思います。
WAM NETのWebサイトに導入事業所が公開されており、そのデータをもとに都道府県別に見てみましょう。

<福祉用具貸与>
北海道 22
青森県 12
岩手県 12
宮城県 16
秋田県 2
山形県 5
福島県 13
茨城県 17
栃木県 12
群馬県 12
埼玉県 33
千葉県 47
東京都 83
神奈川県 66
新潟県 6
富山県 4
石川県 2
福井県 9
山梨県 2
長野県 7
岐阜県 20
静岡県 32
愛知県 56
三重県 15
滋賀県 20
京都府 34
大阪府 93
兵庫県 53
奈良県 13
和歌山県 12
鳥取県 9
島根県 0
岡山県 17
広島県 38
山口県 13
徳島県 3
香川県 9
愛媛県 10
高知県 5
福岡県 40
佐賀県 7
長崎県 14
熊本県 25
大分県 11
宮崎県 22
鹿児島県 29
沖縄県 1
合計 983

福祉用具貸与事業所はおおよそ7,000事業所ありますので、導入率は14%ということになります。

続いて、居宅介護支援事業所、および介護支援事業所の導入数です。

<居宅介護支援・介護予防支援>
北海道 73
青森県 29
岩手県 44
宮城県 41
秋田県 14
山形県 44
福島県 76
茨城県 37
栃木県 16
群馬県 34
埼玉県 97
千葉県 123
東京都 231
神奈川県 190
新潟県 42
富山県 7
石川県 15
福井県 25
山梨県 11
長野県 28
岐阜県 66
静岡県 77
愛知県 130
三重県 34
滋賀県 26
京都府 90
大阪府 223
兵庫県 108
奈良県 31
和歌山県 34
鳥取県 34
島根県 5
岡山県 26
広島県 64
山口県 29
徳島県 13
香川県 44
愛媛県 29
高知県 16
福岡県 64
佐賀県 4
長崎県 44
熊本県 43
大分県 32
宮崎県 70
鹿児島県 47
沖縄県 6
合計 2566

居宅は37,000事業所、包括は5,000事業所あるそうでして、合わせて42,000事業所になり、導入率は6%程度ということになります。

実数としては居宅介護支援・介護予防支援の方が多いのですが、導入率でみると福祉用具貸与の方が倍以上の導入となっています。

福祉用具レンタル会社のみなさんからすると、

やるやるって言うから導入したけど、結局は居宅の方が使ってないから進んでないやん・・・

という状況になっていそうですね。

みなさんの会社の導入状況はいかがですか?

ポイント2:なぜ広まらないのか?「ネットワーク外部性」で考える

2023年4月のスタートから2年が経過しても、なぜ広まっていかないのか?

先ほどの、

やるやるって言うから導入したけど、結局は居宅の方が使ってないから進んでないやん・・・

ということに集約されるのではないでしょうか。

これを解釈するには「ネットワーク外部性」という切り口で考えるとしっくりくると思います。

ネットワーク外部性というのは、

使う人が増えれば増えるほど便利になり、ユーザーに対してのメリットや価値が上がっていくことをいいます。

よく例えとして挙げられるのが「電話」だそうです。
世の中でただ1人だけ電話を持っていたとしても、他に誰も使用する人がいなければ、誰とも通話することができません。
使用する人が増えれば増えるほど、電話という通信ネットワークが広がっていき、日本国内の誰とも、いや全世界の人たちと通話ができるようになるというものです。

またSNSなども例として挙げられます。
YouTubeという動画プラットフォームがあり、いろんな人たちが動画をアップするからこそ、YouTubeを視聴することができ、視ても視ても動画が底をつくことはありません。
一方で、YouTubeを視聴する人がたくさんいるからこそ、動画をアップしたら人々の目に留まるようになり、動画コンテンツを通じて伝えたいことを発信することができるのです。

こんな大きな動画プラットフォームがあるのに、どこぞの誰かが独自のオリジナルチャンネルをつくりました~って言っても視聴しにくるユーザーは限られることでしょう。
オープンに開かれた動画プラットフォームであるからこそ、多様なコンテンツがあり、千差万別な多様なニーズを満たすことができるというものです。

話をケアプランデータ連携システムに戻すと、使用している事業所の数が増えないことには、自社だけ導入したとしても連携は進みません。
せっかくシステムを導入したとしても、点と点でしかつながらないというのが、現状の姿ということになるのではないかと思います。

全体としての導入が進んでいけば、ネットワーク外部性が働き、さらに導入への意欲が促進されるということになりますね。

ポイント3:どの程度まで導入が進めば!?「イノベーション理論」で考える

では、ケアプランデータ連携システムはどの程度まで導入が進めば、さらに導入が加速していくことになるのでしょうか。

一般論ですが「イノベーション理論」で考えるのが一つの切り口ではないかと思います。

イノベーション理論とは、
新たなアイデア、技術、製品、サービスなどが世の中に浸透していく過程を分析し、普及率によって5つの段階に分けて考える理論です。

イノベーション理論によると、最初の2.5%をイノベーターといい「新しもの好き」な層を指します。
次の13.5%をアーリーアダプターといい「先行者」のようあnポジションです。

イノベーターとアーリーアダプターを合わせると16%となり、ここにキャズムという溝が存在すると言われます。
普及率16%を越えないと少数の人たちが使っている状態に止まってしまう一方で、16%を越えることができれば次の34%のアーリーマジョリティに食い込めるということで、その製品・サービスが全体へと浸透していく分水嶺のようなポイントが16%のキャズムということになるのだと思います。

福祉用具貸与事業所でいうと普及率14%ということですので、アーリーアダプターのど真ん中、もうちょっとでキャズムを越えられるぞというところでしょうか。
ただ、肝心かなめの居宅介護支援・介護予防支援の普及率が6%ということなので、イノベーターは越えたけど、まだまだキャズムまでは遠いかなという感じです。

そこをなんとか普及させるための施策としてフリーパスキャンペーンを打ち出して、利用する事業所数を増やそうというところだと思います。

かつてソフトバンクはインターネットを普及させる、その過程でプロバイダーとしてマーケットを押さえるためにYahoo!BBモデムを大量に無料で配布しまくりました。
当時数千円を必要としたモデムを無料配布し、また最初の3か月程度はプロバイダー料金も無料にするというキャンペーンだったと思います。
私自身もYahoo!BBモデムをもらってきて、はじめて自宅にインターネットを引き込んだのを、つい昨日のように思い出します。

インターネットというのもネットワーク外部性が働くもので、点と点や小規模で使っていてもちっとも楽しくありません。
それは昔、マニアの間で行われていた「パソコン通信」というべきもので、一般大衆(マジョリティ)には見向きもされない代物であったといえるでしょう。
時は流れて現在、インターネットがない世の中など到底想像できない世界になっています。

みんなが使って、世界中に膨大なWebページやサービスがあるからこそ、インターネットなしには生活ができないくらいになっているというのも過言ではありません。

ソフトバンクのような(当時)ベンチャー企業がマーケットを押さえにかかるには、売上・利益といったマネタイズは後々のフェーズとして、初期段階では大規模な普及のためのマーケティングキャンペーンを行い、とにかくユーザー数を増やすということが最重要の施策となります。
ケアプランデータ連携システムのフリーパスキャンペーンが、これと同様に効果のある施策となるかどうかは、6月以降の動向を見ていきたいところです。

すでに導入されている事業所さんはいいとして、まだ導入していない事業所さんは普及率16%のキャズムを越えるかどうかの見極めが重要になります。
普及率16%を越え、アーリーマジョリティのフェーズに突入すると、あっという間に急速に広まっていくことでしょう。

そのときにあわてて導入しようとしても、もはや手遅れ、動きの遅い事業所と見られてしまう恐れもあります。

実際の運用上の有用性はさておき、ケアプランデータ連携システムの動向に目が離せないですね。

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
シニア経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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