おさらい解説 ~2024年度介護保険制度改正の行方~

◎みなさまこんにちは。
船井総合研究所の入江貴司です。いつも「福祉用具&リフォーム業績アップコラム」をお読みいただきありがとうございます。

≪要点をまとめると…≫

【ポイント1】手すり・歩行器・杖のレンタル外しは本当にあるのか!?

【ポイント2】発端は財務省の予算執行調査での厚労省への提言

【ポイント3】福祉用具貸与事業所にとって今回の改正は最大の焦点

≪以下 詳細内容≫
第2回の今回は「おさらい解説 ~2024年度介護保険制度改正の行方~」です。

◆ポイント1:手すり・歩行器・杖のレンタル外しは本当にあるのか!?
2024年度の介護保険制度改正で大きくフォーカスを当てられているのが、手すり・歩行器・杖などのアイテムに関するレンタル外しです。
これらのアイテムが「貸与」から「販売」に切り替えられるとすると、福祉用具貸与業界に大きな影響を与えることになります。
過去2006年の、ベッド・車いすの要介護2以上の利用者に制限に比肩するほどの激震といっても過言ではないでしょう。

なぜこうした議論が巻き起こっているのか、その経緯を見ていきたいと思います。

◆ポイント2:発端は財務省の予算執行調査での厚労省への提言
次の改正で手すり・歩行器・杖のレンタル外しが取り沙汰されるようになったのは、財務省の予算執行調査での厚労省に対する指摘・提言にあります。
その資料を見てみると以下のようなことが書かれています。(出典:令和2年度予算執行調査の調査結果の概要10月公表分(財務省))

◎調査事案の概要
ケアマネジャーが作成する居宅サービス計画書等(以下、「ケアプラン」という。)のケアマネジメントの費用については、利用者負担
がない。また、ケアプランの中には、福祉用具貸与のみのケアプランも存在し、ケアプラン作成等のケアマネジメントに係る給付費により
コストが高くなっている。

◎調査結果
・年間で同じ内容のケアプランが一定程度(約4人に1人)存在した
・福祉用具貸与のみのケアプランが全体の6.1%を占め、このうち、1年間同じ内容のケアプランを要介護度別にみると、軽度者である要支援1・2が3/4を占めた

◎今後の改善点・検討の方向性
歩行補助杖などの廉価な福祉用具については、保険給付による貸与から販売に変えることで毎月のケアプラン作成等のケアマネジメントの費用は不要となる
(なお、要介護認定を更新する際や、利用者が地域包括支援センター等に相談する際など、必要に応じて状態を把握・評価すること等が考えられる)
介護保険サービスを利用していない方との公平性の観点からも、軽度者も使用することを想定し要介護度に関係なく給付対象となっている品目(歩行補助杖、歩行器、手摺等)については、貸与ではなく販売にすべき。

要するに、軽度者向けのケアプラン料が高くなっていて、その中には福祉用具だけ使っている人がかなり存在する。軽度者に多い手すり・歩行器・杖を貸与から販売に変えればケアプラン料がかなり抑制されるのではないか?といった指摘がなされているのです。
福祉用具にとっては、とばっちりのような感も無くはないですが、ともあれこうした指摘に端を発して今回の議論がなされているのです。

◆ポイント3:福祉用具貸与事業所にとって今回の改正は最大の焦点
本当にこの議論が進み、手すり・歩行器・杖がレンタルから外されるとすると、福祉用具貸与事業者にとっては甚大な影響が及ぶこととなります。
全国の要介護(要支援)認定者の介護度別総数・構成比は以下のようになっています。(2021年3月時点)
要介護5 585,525人(8.6%)
要介護4 849,809人(12.4%)
要介護3 905,622人(13.3%)
要介護2 1,165,808人(17.0%)
要介護1 1,401,121人(20.5%)
要支援2 949,217人(13.9%)
要支援1 961,142人(14.1%)
合計 6,818,244人

要支援1・2、要介護1・2のいわゆる軽度者が占める比率は65%に上ります。
またこれら軽度者の使用する福祉用具のうち、手すり・歩行器・杖の構成比は前述した財務省の資料によると、
手すり 24.9%
歩行器 37.6%
歩行補助杖 5.6%
となり、合計68%に達します。

会社によって軽度者の比率やレンタル商品の構成比は微妙に異なると思いますが、一般論として軽度者65%×手すり・歩行器・杖68%とすると、レンタル品目の44%を占めることとなります。
レンタルの4割以上がなくなってしまうと考えると、背筋が寒くなる気がしてしまいます。

今回はおさらい解説として、2024年度介護保険制度改正の行方についてみてきました。
第3回は「データで見る福祉用具経営 ~福祉用具13品目と介護度~」今回ご紹介した数値も含めて、より詳細なデータで見ていきたいと思います。
ぜひお楽しみにしてください。

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
チーフ経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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