データで見る福祉用具経営 ~マーケットサイズと購買頻度~

◎みなさまこんにちは。
船井総合研究所の入江貴司です。いつも「福祉用具&リフォーム業績アップコラム」をお読みいただきありがとうございます。

≪要点をまとめると…≫

【ポイント1】マーケットサイズとは?購買頻度とは?

【ポイント2】福祉用具の品目ごとのマーケットサイズ/購買頻度

【ポイント3】新規利用者を獲得するのに強化すべき品目は?

≪以下 詳細内容≫
福祉用具貸与の基本から現在の動向までシリーズでお届けしている連載コラムです。
第4回の今回は「データで見る福祉用具経営 ~マーケットサイズと購買頻度~」についてお書きしてまいります。

◆ポイント1:マーケットサイズとは?購買頻度とは?
船井総研が経営戦略・マーケティング戦略を立てる際に活用している考え方にマーケットサイズというものがあります。
これは「国民1人あたりの消費金額」を表し、商圏が限定されるローカルビジネスでの市場パイや目標シェアを算出するのにとても使いやすい指標です。

例えば、ある商品Aのマーケットサイズが500円だったとしましょう。国民1人あたりの消費金額なので、生まれたばかりの赤ちゃんから小学生、現役世代から高齢の方までみんな一様に年間500円をその商品に使うということになります。
その商品Aを扱うお店の商圏人口が50万人だとするとどうでしょう。市場パイは500円×50万円となり、2億5千万円のマーケットがあるということになります。
2億5千万円の市場で、仮にその商品Aの売上高が2500万円だったとするとシェアは10%ということになります。
シェアアップの作戦を立てて、2倍の20%を目指すとすると、目標売上高は5000万円ということになります。
このように市場パイ、シェア、目標シェア・目標売上高などを簡単に算出できる指標がマーケットサイズというものになります。

では、購買頻度とはどのようなものでしょうか。
これはどのくらいの頻度で購買行動がなされるかを算出できるものであり、マーケットサイズをその商品の平均単価で割ることで計算することができます。
仮に先ほどの商品Aの平均単価が250円だったとすると、マーケットサイズ:500円÷平均単価250円=2と出てきます。
これが意味するところは商品Aの購買頻度が年間2回、半年に1回ペースで購買がなされるということになります。

ちなみにこの考え方で住宅改修のマーケットサイズと購買頻度を計算してみました。
住宅改修のマーケットサイズは325円、商圏人口20万人のマーケットだと6500万円の市場パイがあります。
シェア理論でいう地域一番シェアの指標:26%を獲得している事業所だと、住宅改修の年間売上高が1690万円ということになります。
1か月平均で140万円、平均単価が93,000円だとすると月平均15本の施工をするということになります。
まあまあ、中らずと雖も遠からずというところではないでしょうか。

購買頻度は平均単価の1割負担9300円で計算します。325円÷9300円=0.035となります。
購買頻度:0.035と言われてもピンとこないと思いますので、これの逆数を取ると1÷0.035=29となり、29年に1度住宅改修が発生するということになります。
人生のなかで30年に1度住宅改修の施工をするというと「まあそんなもんか」というところではないでしょうか。

このようにマーケットサイズ、購買頻度という観点で自社の商品、ひいては事業領域を捉えてみることで経営戦略に生かすことができるのです。

◆ポイント2:福祉用具の品目ごとのマーケットサイズ/購買頻度
さて、ここからが本題です。
先ほどご紹介したマーケットサイズという観点で福祉用具13品目を見てみたいと思います。

<福祉用具13品目のマーケットサイズ>
  車いす:505円
  特殊寝台:860円
  床ずれ防止用具:156円
  体位変換器:20円
  手すり:697円
  スロープ:109円
  歩行器:255円
  歩行補助つえ:25円
  認知症老人徘徊感知機器:23円
  移動用リフト:90円
  自動排泄処理装置:0.7円
※車いす付属品は車いすに、特殊寝台付属品は特殊寝台に含めました。

いかがでしょうか。これらのマーケットサイズにみなさまの商圏人口をかけると市場パイが算出できます。
そのなかで、自社の年間レンタル売上が占める割合を出せば、自社の品目ごとのシェアが想定できますので、計算してみていただければ幸いです。

<福祉用具13品目の購買頻度>
  車いす:0.71→1.4年に1回
  特殊寝台:0.91→1.1年に1回
  床ずれ防止用具:0.23→4.4年に1回
  体位変換器:0.05→19.3年に1回
  手すり:2.13→0.5年に1回
  スロープ:0.37→2.7年に1回
  歩行器:0.79→1.3年に1回
  歩行補助つえ:0.21→4.7年に1回
  認知症老人徘徊感知機器:0.03→29.1年に1回
  移動用リフト:0.05→19.4年に1回
  自動排泄処理装置:0.00→1373.6年に1回
※車いす付属品は車いすに、特殊寝台付属品は特殊寝台に含めました。

もっとも購買頻度が高い品目は手すりということになり、0.5年に1回、つまり半年に1回利用があるということになります。
また特殊寝台は1.1年に1回、1年ごとにベッドの利用があるかというと「うーん、どうかな?」という感じですが、計算上はそれくらいの頻度ということになります。

◆ポイント3:新規利用者を獲得するのに強化すべき品目は?
これらをもとに、13品目を以下の4象限に分類してみました。
①高頻度×高単価品
 ⇒特殊寝台、車いす

②高頻度×低単価品
 ⇒手すり、歩行器、スロープ、歩行補助杖

③低頻度×高単価品
 ⇒移動用リフト、自動排泄処理装置、床ずれ防止用具

④低頻度×低単価品 
 ⇒徘徊感知機器、体位変換器

新規利用者の獲得ということになると、高頻度で利用が発生するアイテムの方が新規獲得につながりやすくなるでしょう。
以前にこのコラムでお伝えした商品と介護度の関係を考えると、

①高頻度×高単価品(特殊寝台、車いす)⇒要介護2以上の利用者

②高頻度×低単価品(手すり、歩行器、スロープ、歩行補助杖)⇒要支援~要介護2の利用者

どのゾーンを狙っていくかによって、強化する品目を絞っていくということになります。
ご注意いただきたいのは、「まんべんなく」全部やるということは避けたいという点です。
全国展開している大手事業所であれば、強者の戦略で「包み込み」で全部やればいいのですが、中小企業すなわち弱者の戦略は「差別化」です。
「差別化」とは何かで圧倒的に突き抜けることであり、それに伴い何かを捨てることでもあります。

今回ご紹介したデータも参考に自社の「差別化」を考えていただけますと幸いです。
次回は福祉用具業界の展望として、2021年の振り返りと2022年以降の方向性というテーマについてお届けしていきたいと思います。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ ビジネスモデル解説動画
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★住宅改修×福祉用具 セット提案モデルをわかりやすく解説
福祉用具レンタル業 なぜセット提案モデルは業績が上がるのか?

ビジネスモデル解説ムービーはコチラから!

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ ビジネスモデル研究会情報
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

★福祉用具レンタル事業者向け
「福祉用具&リフォーム経営研究会」

福祉用具レンタルと住宅改修をセットで提案することで、
業界3倍の獲得数を実現するビジネスモデル。
全国の会員企業で成功事例が続出中!

詳しくはコチラ↓
https://fhrc.funaisoken.co.jp/fukushiyogu-lp

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 過去のメルマガバックナンバー
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

何回読んでも、ためになる。
経営に迷った時の指標になる。

過去の成功事例バックナンバーはコチラ。
http://www.funaisoken.co.jp/site/column/column_mailmag1332.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■ 執筆者紹介
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
チーフ経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

page top