福祉用具レンタル業 なぜ生産性向上が必要なのか? ~後編~

みなさまこんにちは。いつも福祉用具経営.comをご覧いただき、まことにありがとうございます。
前回のコラムでは「福祉用具レンタル業 なぜ生産性向上が必要なのか? ~前編~」として、福祉用具レンタル業の外部環境の側面から今後の動向を探ってきました。

ざっくりとその内容を振り返ると、、、
■業績は伸びる(市場は引き続き成長)
■力のあるところに業績が集中、より業務過多となる
■人手不足の状況は変わらない
■さらに他業種と比べて人材採用の難しさ

そんなことをお伝えさせていただきました。
今回はその後編として、生産性を上げていく上での考え方、会社をどう変革していけばよいのかについてお送りしていければと思います。

生産性って?

今回のタイトルにもあります「生産性」というワード。
まずはこの生産性について、あらためて確認をしておく必要があると思います。

生産性といったときに、粗利生産性または人時生産性(にんじせいさんせい)を次のように定義します。

粗利生産性=年間粗利/社員数

人時生産性=月間粗利/月間総労働時間

粗利生産性は、年間粗利を社員数で割るわけなので、1人あたり粗利と言い換えることができます。
社員1人がどれだけの粗利を稼いだのかというのが粗利生産性の意味ということになります。

人時生産性は、期間は月でも年でもいいのですが、期間内の粗利を同じ期間の総労働時間で割るということで、時間あたり粗利と言い換えることができます。
1時間あたりでどれだけの粗利を稼ぐことができたのかということになります。

私は常々、この生産性という概念が、頭でわかってはいても、その意味合いとか重要さがいまいちわからないと思っていました。
粗利とか社員数といういわば実数が大事なのはわかるのですが、それを割り算した生産性なんてただの結果数字じゃないか。
それを高いだの低いだのって、なんの意味があるんだろう・・・

そこでこう考えてみることにしました。例えば粗利生産性であれば、

粗利生産性=年間粗利(アウトプット)/社員数(インプット)

この式を変形させると、

社員数(インプット) ⇒ 変換効率(粗利生産性) ⇒ 年間粗利(アウトプット)

どんな企業活動でも、インプットがあってその間に企業活動がありその結果としてアウトプットがあります。
その企業活動の変換効率(生産性)が高いか低いかによってアウトプットが変わってきます。

例えば、社員数が20名の会社だったとして、
A:粗利生産性=700万円/人の場合のアウトプットは、年間粗利=1億4000万円
B:粗利生産性=1000万円/人の場合のアウトプットは、年間粗利=2億円

Aの会社とBの会社、どちらが効率よく稼いでいるでしょうか?どちらが多くの利益を出せるでしょうか?どちらが社員の給与水準を上げられるでしょうか?
このように考えると生産性という概念が少しはわかりやすくとらえることができるのではないかと思います。

前編でまとめたように、人手不足や採用難の状況から、今後インプットを増やすことができなくなる(かも?)未来が予測されます。


これまでは、売上・粗利を伸ばす手段として人をどんどん採用して・・・という、インプットを増やす施策を当たり前に考えていたかもしれませんが、その手が封じられてしまうかもしれないのです。
インプットを増やすことができなくて、言い換えると人を増やすことができなくなり、それでも会社を成長させていくことを考えると生産性を上げていくことを考えないといけません。
そんな未来が、この福祉用具レンタル業界には、すぐ目の前に迫ってきているのです。

生産性を上げるにはまず営業の変革から

それでは、生産性を上げていくにはどんなことを考えればよいのでしょうか。
福祉用具レンタル会社の生産性が上がらないのには、1つの要因があると私は考えています。
その要因とは【営業がマルチタスクを抱えすぎ】ていることにあります。

福祉用具レンタル会社の営業は、マルチタスクすなわち、なんでもかんでもやらないといけません。
ケアマネへの営業はもちろん、利用者の対応、納品、追加・交換、引上げ、モニタリング、担当者会議、書類作成、役所への申請、、、と挙げていくとうんざりしてきます。

なんでもかんでもやらないといけないために、仕事の効率が上がらない。
なんでもかんでもやらないといけないために、本来やらないといけない攻撃という営業の仕事ができない。
なんでもかんでもやらないといけないために、「あの人しかできない」状態になってしまう
なんでもかんでもやらないといけないために、若手が仕事を覚えた頃に「やってられません。」と辞めていってしまう。

そんな状態を脱して生産性を上げていくには、まず営業の変革が必要と考えています。
営業の変革とは、営業が本来やらないといけないケアマネ訪問と利用者対応に集中的に時間とパワーを投入できるようにすること。

とりわけ、利用者への初回訪問・提案は特にこだわって力を入れないといけない部分だと考えています。
いくつかの会社様で利用者への初回訪問・提案を強化していく取り組みを進め、「初回訪問・提案パターン」を固めていっています。
ある会社様では、そうした初回訪問・提案パターンに近いやり方をすでに実行している拠点が新規獲得粗利、人時生産性ともに他拠点と比べて飛び抜けて高い傾向が数値で示されています。
現在はそのやり方をしっかりと固め、他の拠点へと展開していく動きを進めているところです。

目指すべきは、圧倒的に攻撃力の高い営業パターンをつくることであり、そのように営業の行動をパターン化していく動きを進めているというわけです。
非常に効果的かつ、営業が大きく変わるきっかけになる取り組みです。ご興味のある方はぜひお問い合わせいただければと思います。

組織の変革・役割分担を進める

先にも述べましたが、多くの福祉用具レンタル会社の営業は超・マルチタスクで仕事をしています。
利用者の対応、納品、追加・交換、引上げ、モニタリング、担当者会議、書類作成、役所への申請、、、やるべき仕事を挙げていくとキリがありません。
これを営業が本来やらないといけないケアマネ訪問と利用者対応に集中的に時間とパワーを投入できるように、組織の変革を行い、役割分担を進めることが必要なのです。

組織の変革といったときに、多くの福祉用具レンタル会社では、営業と(請求)事務という大まかに括られた組織であることが多いと思います。
これを次のように組織のハコを考えていきます。

◆営業
◆フィッティング(社外でのサポート)
◆サポート(社内でのサポート)
◆事務

次にそれらの役割分担として、下記のように考えていきます。

◆営業:ケアマネ訪問、利用者(初回)訪問、カンファレンス、会議・その他
◆フィッティング:納品、追加・交換、引上げ、モニタリング、担当者会議、ケアマネ報告
◆サポート:書類作成、発注、請求情報整理・チェック、顧客データ管理
◆事務:国保連請求、利用者請求

ここで大事なことは、営業は営業にしかできないことに時間とパワーを集中投下できるようにすることです。
営業にしかできないこととは、ケアマネ訪問であり、利用者対応を指します。
それ以外のことはフィッティングやサポートに任せ、思いっきり攻撃に回るように組織を変革し、役割分担を組み替えることを進めていくのです。

今回のコラムでは「福祉用具レンタル業 なぜ生産性向上が必要なのか? ~後編~」と題して生産性の考え方、営業の変革、組織と役割分担についてお伝えしてまいりました。
実は、今回のお話を実際に行動に移し、社員1人あたり粗利1000万円を超える成果を上げている株式会社ナガヨシ様のナマのお話をお聞きいただけるチャンスがあります。
近未来を見据えたときに、いかに生産性を上げていくか、ヒントが欲しいとお考えの経営者様。
ぜひ下記のページをご覧いただき、長吉社長のお話をお聴きいただければ幸いです。

地方の成熟市場で利用者純増250名! 高生産性モデルの作り方

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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