【ダイジェスト解説】福祉用具レンタル業 2023年最新業界時流レポート

これからの福祉用具レンタル業の経営課題は、人的資源が制約条件となるなかで、いかに持続的に成長させられるか?という点にあります。
みなさまはこの経営課題への答えはお持ちでしょうか。

2022年も残すところ1ヶ月強となるなか、「福祉用具レンタル業 2023年最新業界時流レポート」を作成いたしました。
今回のコラムでは、こちらのレポートをダイジェストで解説し、みなさまの福祉用具経営へのヒントとしていただける内容とできればと思います。
ぜひ本コラムをお読みいただくとともに、レポートもダウンロードいただければ幸いです。

ポイント1:福祉用具レンタル業のマーケット概観

まずは福祉用具レンタル業のマーケットについて概観しておきたいと思います。

厚生労働省が公開している「介護保険事業状況報告」によると、福祉用具貸与の年間費用額(≒市場規模)は次のように推移しています。

2002年度:1,039億円
2020年度:3,721億円

約20年間で3.6倍にまで市場規模が大きくなっています。

直近での成長率を見ると、
2019年度:3,494億円
2020年度:3,721億円
となっており、106.5%の成長率となっています。

また、福祉用具利用率という面にも目を向けてみましょう。

介護保険認定者数福祉用具利用者数福祉用具利用率
2011年度530万人137万人25.8%
2015年度620万人172万人27.7%
2020年度682万人228万人33.4%

年々福祉用具利用率は上がっています。

高齢化の進展とそれに伴って、介護を必要とする人の数は増加しています。
それにも増して、福祉用具の利用者数は上回るスピードで成長しているとみることができます。

そう考えると、

福祉用具レンタルの市場規模は引き続き拡大、福祉用具利用率も上昇しており市場環境は追い風

と捉えることができるでしょう。

ポイント2:介護保険制度改正の行方

厚生労働省が公開している「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会」の資料より抜粋・引用します。

【現行制度における福祉用具貸与と特定福祉用具販売の考え方の再整理】より気になる部分を抜き出してみます。
〇つえ、スロープ、手すりのうち、希望小売価格が特に廉価なものについては、利用目的等を考慮・整理した上で、販売に移行することも考えられる。
〇貸与の開始から一定期間経過したものについては、(中略)貸与と販売の選択制を検討する必要がある
〇(中略)「貸与と販売のあり方を考えること」と「現行では福祉用具貸与の場合にケアマネジメントの費用がかかること」とを分けて議論するべきである。

【一部の貸与種目において福祉用具貸与・特定福祉用具販売の選択を可能かどうかに対する考え方】より気になる部分を抜き出してみます。
〇(中略)ある程度中長期の利用が実態上見受けられる用具(例:歩行補助つえ、スロープ等)について福祉用具貸与又は特定福祉用具販売の選択を可能とすることが考えられるのではないか
〇保険者、被保険者への幅広いアンケート調査などを行う必要があるのではないか
〇(中略)利用者の自己負担等はどのような変化が考えられるのかについて、検証するべきではないか

これからのことから、現在の議論の行方は次の3つのポイントにまとめて考えることができると思います。

1)歩行補助つえ、スロープ、手すりなど比較的廉価なアイテムは販売への移行、または貸与と販売の選択制が検討されている
2)そのうち「実態上利用期間が中長期のアイテム」として歩行補助つえ、スロープへと絞られてきている
3)「福祉用具貸与の場合にケアマネジメントの費用がかかること」という当初の議論から、「貸与と販売のあり方を考えること」という各論に移行していっている

ここから、

懸念されていた【軽度者の貸しはがし】については限定されたものになる方向性ではないか

と推測されます。

どちらかというと福祉用具レンタル業の業績に対してはポジティブな方向に向かっていると考えることができると思います。

ポイント3:業界を取り巻く環境(人的資源)

業界を取り巻く環境、特に人的資源という側面から次の点をピックアップしています。

採用難の状況は続く。以前として採用環境は厳しく、今後の人口減少も採用難に拍車をかける傾向となるでしょう。

厚生労働省より「介護サービス施設・事業所調査」を見ると、福祉用具専門相談員の数は近年次のように推移しています。

2018年 34,750人
2019年 34,481人
2020年 34,437人

福祉用具専門相談員の数は微減傾向であり、担い手の減少という傾向がみられます。

その要因の一つとして、福祉用具専門相談員という職種は給与面で決して恵まれたものではないということが挙げられます。

令和2年度障害福祉サービス従事者処遇状況等調査(臨時調査)結果の概要を基に整理したデータによると、関連職種を含めた給与水準は次のようになっています。

福祉・介護職員297,910円
サービス管理責任者373,440円
看護職員404,370円
理学療法士・作業療法士390,000円
技能訓練担当職員368,570円
心理指導担当職員397,960円
管理栄養士・栄養士345,840円
調理員279,620円
事務員343,380円
福祉用具専門相談員273,300円

これを見ると福祉用具専門相談員の給与水準は関連職種で最低水準のものとなっているというデータになります。
これではなかなか担い手が増えていかないのも仕方ないのではないかと思わされてしまいます。

こうした状況を整理すると、

福祉用具専門相談員の担い手の減少、給与水準の低さにも起因して採用難の状況が続く

とみることができると思います。

福祉用具レンタル業の経営課題

さて、ここまで福祉用具レンタル業の最新業界時流ということで、マーケット環境、法制度、人的資源の環境の3つの側面を見てまいりました。

こうした状況を整理すると、冒頭に述べた経営課題としての

人的資源が制約条件となるなか、今後も持続的に成長させていくポイントは何か?

というテーマに行き着くというわけです。

これに対する「福祉用具経営の方向性」については、ぜひレポートをご覧いただければと思います。
コラム下部の画像をクリックしていただくと、レポートダウンロードページにリンクしています。今後の経営の方向性を見据える上で、少しでもヒントになればうれしい限りです。

私たち船井総合研究所 福祉用具&リフォームチームでは、今後もこうしたレポートを定期的に発行してまいります。

福祉用具レンタル業の経営をしていく上で、必要不可欠な情報プラットフォームになるために。
福祉用具レンタル業の経営者様の心強い伴走者となるために。

2023年以降も有益な情報を配信してまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
チーフ経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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