【3分でわかる】2024年度介護保険制度改正の動向をざっくり解説

福祉用具レンタル会社の経営者、また管理者のみなさまなら、いま最も気になるニュースの一つといっても過言ではない2024年度介護保険制度改正の動向。
もっとかいつまんで言うと「杖・手すり・歩行器のレンタル外しはあるのか?」ということなのですが、今回のコラムでは直近の動向をざっくり解説してまいりたいと思います。

なお、今回解説する情報は厚生労働省のWebサイトでも公開されている「第6回介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会(9月5日)」の資料をもとにしています。
より正確な情報はそちらの資料をご参照の上、今後の経営判断に活用いただきますようお願いいたします。

ポイント1:基本的な考え方

福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会には、まず総論として「基本的な考え方」が示されています。
その「基本的な考え方」は以下の4つの項目から構成されています。

①高齢者の自立
介護保険制度における、高齢者の自立支援、利用者自身の選択、予防重視、在宅重視という基本的な理念は普遍的であり、各サービス等によって日常生活の拡大や、社会参加によって地域共生社会の一員として暮らせることを目指すものであり、福祉用具の使用は一つの手段であることを認識した上で、高齢者等の自立にとって何が適切なのかを踏まえて検討をする必要がある。
(原文のまま引用)

最も大事なことは【高齢者の自立】であり、福祉用具の使用はその一つの手段であることを忘れちゃいけない。
貸与なのか販売なのかということの議論は、この原則を外れていってはいけないよね、ということを常に再確認しています。

②福祉用具貸与等が果たしてきた役割
在宅生活の維持や、効果的・効率的な給付において、福祉用具貸与や介護支援専門員との連携も含めた福祉用具専門相談員が果たしている役割の重要性を踏まえるべきである。
(原文のまま引用)

福祉用具レンタルという制度、福祉用具専門相談員とケアマネの連携が高齢者の在宅生活を支えてきた役割は重要だよね、ということを再確認しています。

③制度の持続可能性の確保
今後も利用者が増加する一方、担い手である現役世代は減少していくことから、介護保険制度の持続可能性も踏まえて、共助の仕組みである福祉用具貸与について、介護保険方式の全体の中のリスクをどう考えるのか、社会保障制度としての公平性や機会均等、給付と負担等の観点から議論していくことが必要である。
(原文のまま引用)

とはいえ、高齢化が進んで介護保険制度そのものの持続可能性を考えると、ある程度の制度変更はやむなしという面もあるよね、ということを再確認しています。

④制度制定当時からの変化に伴う対応
介護保険法施行当初と比較して、福祉用具製品の充実や市場の拡大、要支援の者、要介護度1の者については特に増加率が高くなっていることから、これらの変化も踏まえ、現在の状況に即した議論を進めるべきである。
(原文のまま引用)

介護保険法が施行されてから時間も経過し、状況も変化していっていることもあるので、そのあたりも考慮しないといけないよね、ということを再確認しています。

これら4つは非常にごもっともで反論の余地はありません。検討会で議論を進めていく上で、常にこうした基本的な考え方を意識し、煮詰まった時にはこの考え方に立ち返ることが必要だということだと思います。

ポイント2:貸与と販売のあり方の検討

いよいよここからが、議論の本丸に近くなっていきます。
ここでは「積極的な検討を求める意見」つまり、貸与から販売へと移行していくことを推進するサイドの意見が。

一方で「慎重な検討を求める意見」つまり、ちょっと待ってじっくり考えた方がいいんじゃない?というサイドの意見の双方が出ています。

まずは「積極的な検討を求める意見」から抜粋します。
○ つえ、スロープ、手すりのうち、希望小売価格が特に廉価なものについては、利用目的等を考慮・整理した上で、販売に移行することも考えられる。例えば、スロープには価格が安価な固定用スロープもあり、状態変化等による借り換えの割合も低いことから、これらは販売にしても利用者の負担は低いと考えられる。
○ 貸与の開始から一定期間経過したものについては、利用者の意向や負担の状況等を考慮して、貸与と販売の選択制を検討する必要がある。
(原文のまま引用)

比較的価格の低いアイテム、例えばスロープなどについてはレンタルから販売にしてもいいんじゃないかな。
あと、利用期間が長くなっているものは、レンタルと販売の選択ができるようにしてもいいんじゃないかな。
そんな意見が出ているようです。

次に「慎重な検討を求める意見」から抜粋します。
○ 福祉用具は貸与を原則として、福祉用具専門相談員によるモニタリングにより、用具の不適合・不具合を事前に察知し、状況に応じて製品の交換やメンテナンスを行うPDCAを実施しており、利用者の安全性確保が原則である。
○ 高齢者は状態の変化(悪化・改善等含む)が生じやすいため、適宜借り換え等も行うことができることから、在宅での自立した生活を維持するという目的を福祉用具貸与は果たしている。短期間で貸与が終了する者も一定数おり、必ずしも販売の方が経済的負担が少ないというものではない。
(原文のまま引用)

福祉用具は貸与が原則で、モニタリングをしっかりやることでアイテムの入替やメンテナンスをして利用者の安全性確保が原則だよね。
高齢者は身体状況が変化するので、短期間でレンタルが終了するケースもある。販売の方が負担が少ないとは一概には言えないよね。
そんな意見が出ています。

レンタルから販売への意向に「積極的な意見」と「慎重な意見」の双方があり、どの方向にいくのかまだまだ注視が必要なようです。

ポイント3:以前の議論からの推移

この介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会は、第1回2月17日からほぼ月1回ペースで開催されており、第6回9月5日が直近の開催となっています。
第1回や第2回などは「廉価な福祉用具」として、手すり・歩行器・スロープ・歩行補助つえの品目が議論の対象として挙がっていました。

先にみた「積極的な意見」では、つえやスロープとなっており、品目はかなり絞られてきているように思われます。
議論として言及されていない手すりや歩行器などは、楽観的に考えると、今回の対象から外れつつあるのかと考えることもできると思います。(あくまで筆者の見方です。)

手すりについて少し気になる記述があるのは、

貸与決定後等における給付内容の検証の充実

という項目のなかで、下記のことに触れられています。

福祉用具貸与における同一種目の複数個支給等

○ 手すりは極端に多いケースがあり、他の種目と併せて同一種目の複数個支給に一定の制限が必要という意見の一方、規制によって、複数個支給で満たすことができる特殊なニーズへの対応が困難になる可能性に懸念を示す意見もあることから、支給の実態や自治体における取組を把握の上、丁寧に検討する必要がある。
(原文のまま引用)

これは、
手すりは1人の利用者でいくつも使っているケースがあるけど、使う個数に制限をかけることも必要なんじゃないの?
いやいやいっぱい使うからこそ利用者さんの負担軽減になるケースもあるんで、慎重に考えないといけないっす!
というイメージかと思います。

これも、楽観的に考えると、手すりはレンタルのままは基本線だけど、1人の利用者でいっぱい使うケースはちょっと考える必要があるというところまで絞られてきていると捉えることができると思います。

今回のコラムでは、2024年度介護保険制度改正の動向をざっくり解説ということで、現在の議論の状況を整理してみました。
いかがでしょうか、わかりやすくお届けできていればうれしい限りです。

いずれにしても、まだまだ議論の行方には注視が必要であることには変わりありません。
今後も介護保険制度改正に向けた動向については、定期的にコラムでお伝えしてまいりたいと思います。

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
チーフ経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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