福祉用具レンタル 販売と貸与の選択制はいよいよ最終章へ!

福祉用具の一部の種目についての貸与と販売の選択制の検討がいよいよ煮詰まってきたようです。

このコラムでも何度か取り上げさせていただいている、貸与と販売の選択制についての議論。
10月30日に介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会(第9回)が実施され、

「介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会対応の方向性に関する取りまとめ(案)」

が作成されました。

これをもって社会保障審議会での議論へと進めていくものと思われます。
今回のコラムでは、この取りまとめ(案)についての内容を見ていきたいと思います。

ポイント1:対象とする種目・種類は!?

ここから、福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会の内容をレビューしていくわけですが、福祉用具&リフォーム経営研究会の会員企業でもある株式会社ゴトウライフクリエイション様が運営する「福祉用具屋さんチャンネル」で詳しく、かつわかりやすく解説されていますので、そちらもご覧いただくとよいかと思います。

まずはみなさん気になる貸与と販売の選択制の対象となる種目・種類について。

「いったいどのアイテムが選択制の対象になるんだろう??」

選択制のお話が出てきた当初は、歩行補助杖、手すり、スロープ、歩行器など「比較的廉価な福祉用具について」ということになっていました。
さらにはこれらの品目が貸与の対象から外れるのでは!?という一説も飛び交っていました。

もし本当に杖、手すり、スロープ、歩行器を対象として、介護保険の対象から外れるとすると、多くの会社は大きな影響を受けることになります。
多少の差はあれど、レンタル稼働商品に占めるこれらのアイテムは6割~7割に上るわけで、それだけの売上が吹き飛んでしまうとすると、たちまち経営が行き詰まる会社が続出することでしょう。
そんなところから議論がはじまったのもすでに懐かしい話に思えます。

それから様々な紆余曲折を経て、今回の取りまとめ(案)では、

「固定用スロープ」「歩行器」(※1)「単点杖」「多点杖」

の4つが貸与と販売の選択制の対象となっています。

「歩行器」のところに注釈として(※1)がついているのは、
※1対象種目である「歩行器」は種類ごとに「歩行車」若しくは「歩行器」に区分することができ、選択制の対象として考えられるのは種類としての「歩行器」である。
一般的な広義の歩行器ではなく、室内で使用するピックアップ式の「歩行器」が対象になるとイメージするとよいかなと思います。

また「固定用スロープ」についても、一般的な広義のスロープとして、つけたり外したりできるダンスロープのようなものではなく、敷居段差に取り付けて使用するダイヤスロープのようなものが対象とされています。
家屋の中に敷居段差はたくさんあるので、いくつものダイヤスロープを使用するというケースもあることでしょう。

これまで特定福祉用具では、1種目あたり1つと限定をされていると思います。
では、今後「固定用スロープ」で販売を選択したとすると、1つしか購入できないのかというと、下記のような議論も併せて付記されています。

○「固定用スロープ」等については、複数個の使用が必要とされる場合があるため、購入される場合には必要に応じて複数個支給を認めるよう、国から自治体に対して周知を行うこととする。また福祉用具専門相談員に対しても、必要性について十分に検討することを求めることとする。

まず1つ目のポイント、種目・種類については上記のように取りまとめ(案)で定義されていると捉えていただければと思います。

ポイント2:医療職を含めた多職種の意見を踏まえて貸与/販売の選択?

次なるポイントは、貸与にするか?販売にするのがいいか?どうやって判断するのかという点です。

大きな前提は次の2点です。

一つ、一律に対象者を限定することは困難であることから、選択制の対象者は限定しないこととする。

一つ、利用者等の意思決定に基づき、貸与又は販売を選択することができることとする。

期間が短いなら貸与の方が利用者負担は軽くなる一方で、ある水準を超えて長期間の利用になるなら買ってしまった方が結果的に安くなります。
どんな人が長期間の利用になるのか、その傾向が見出せるかどうか検討がなされたのですが、結論としては、
「介護が必要になった原因」は様々であり、また、過去のデータから長期利用者に関する一定の傾向は確認できるものの、一律に対象者を限定することは困難
ということになりました。
というわけで、選択制の対象者は特に限定することはしない。

またあくまでも利用者等(ご家族)の意思決定で選択することができるというのが大きな前提です。

その意思決定に助言して影響を与える存在として、次のようなことに言及されています。

○貸与と販売の選択について検討を行う際は、医師やリハビリテーション専門職等の医療職を含めた多職種の意見を反映させるためにサービス担当者会議等を活用することとするほか、介護支援専門員が各専門職への「照会」により意見を聴く方法も可能とする。
○介護支援専門員又は福祉用具専門相談員は、取得可能な医学的所見等に基づきサービス担当者会議等で得られた判断を踏まえ、利用者等に対し、貸与又は販売に関する提案を行う。

誤解を恐れずに、実際の場面を想定してものすごく平たく言うと、

どのくらいの期間使うことになるか、それによって借りるか買うか、どっちがいいのかお医者さんかリハの先生に聞いた方がいいんちゃう?

という感じでしょうか。

現時点ではこれがどの程度の強さで義務のようなものになるのか、意見を求めること”も”できるという程度なのか、まだ見えてこないと思います。
ただ、ケアマネにとって手間が増えることになりそうというのは十分に予想がつきますね。

ポイント3:販売後の対応はどうなるの?

あともう一つのポイントは、仮に販売した場合の後々の対応をどうするのか?という点です。

貸与であればモニタリングによって6か月に1度以上の点検や利用状況の確認がされる(ことになっている)けど、販売した場合はどうなるの?ということですね。

販売後の確認やメンテナンスのあり方として、次のようにされています。

〇選択制の対象となる福祉用具を販売した場合、福祉用具専門相談員は、
・福祉用具サービス計画における目標の達成状況を確認する。
・保証期間を超えた場合であっても、利用者等からの要請に応じて、販売した福祉用具の使用状況を確認し、必要な場合は、使用方法の指導、修理等(メンテナンス)を行うよう努める。
・利用者に対し、商品不具合時の連絡先を情報提供する。

そもそも、ふつうに私たちが日常生活で何かを買った場合のことを考えると、
何か不具合があれば買ったところに言って対応してもらうし、修理が必要であればお金を払って直してもらいます。
ちゃんと使うかどうかは、まあ自分でなんとか使うし、使ってないということはさして必要でないものを買ってしまったんだなということになると思います。

販売する、購入するってそういうもんだと思うのですが、介護というジャンルでの商売柄、保証期間を超えた場合でも「何とかします~」なんてことにならないようにありたいなと思います。
まあ、あくまで私の私見ですが。

ここまで福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会での取りまとめ(案)について、重要と思われるポイントについてみてきました。


思いっきり引いた目線で客観的にみると、種目・種類の最終的な案が固まったことと、それ以外の項目も含めて、おおよそ穏便な形にまとめていただいたかなという風に思います。

気になる点としては、【リハビリテーション専門職等の医療職を含めた多職種の意見】を収集するケアマネの手間が増えそうかなというところであり、
その手間が利用者・ご家族の意思決定のスピードを鈍らせないか?というところです。

どっちにしよ?どっちがいいんやろか?リハビリの先生に聞いてみなあかんかなぁ?

とか言ってる間にずるずる時間が経過して、いつまでもデモのまま決着がつかないなんてことも起こりえるかもしれませんね。

ひとまずこれにて取りまとめ(案)が固まりました。
あとは今後の、社会保障審議会の行方を見守ることといたしましょう!

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
チーフ経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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