福祉用具レンタル業 2024年介護報酬改定は業界にどう影響する!?

2024年の介護報酬改定が厚生労働省 社会保障審議会から発表されました。
福祉用具レンタルに関わる主な項目としては、次のようなところかと思います。

◆業務継続計画(BCP)
◆貸与と販売の選択制の導入
◆モニタリング

これらの制度改正をいま一度おさらいするとともに業界にもたらす影響について考えてみたいと思います。

ポイント1:2024年介護報酬改定についてのおさらい

以前から懸案となっていた介護報酬改定について、いよいよその内容が固まり4月からの施行を待つという時期になってまいりました。

先述した3つの主な項目
◆業務継続計画(BCP)
◆貸与と販売の選択制の導入
◆モニタリング

これらについてざっとおさらいをしていきたいと思います。

◆業務継続計画(BCP)

2024年4月以降、BCP=Business Continuity Planといわれる業務継続計画を策定することが義務付けられます。
また策定したBCPに従い必要な措置を講ずることも義務付けられ、そうした基準を満たしていない場合、単位数の減算(100分の1)という処置がとられます。

ただし2025年3月31日までの期間は経過措置として減算は適用されないということになっています。

◆貸与と販売の選択制の導入

今回の改定を前にもっとも議論された項目なので、内容についてはよくご存じの方も多いと思います。

固定用スロープ歩行器(歩行車を除く)単点杖(松葉づえを除く)多点杖を対象として貸与と販売の選択制が導入されるというものです。

選択制の導入に伴って、貸与か選択かの判断においては、
(ア)選択制の対象福祉用具の提供に当たっては、福祉用具専門相談員または介護支援専門員(※)が、福祉用具貸与または特定福祉用具販売のいずれかを利用者が選択できることについて、利用者等に対し、メリットおよびデメリットを含め十分説明を行うとともに、利用者の選択に当たって必要な情報を提供すること、および医師や専門職の意見、利用者の身体状況等を踏まえ、提案を行う。

また販売を選択した場合の事後対応として、
(ウ)特定福祉用具販売について、選択制の対象福祉用具の提供に当たっては、福祉用具専門相談員が、特定福祉用具販売計画の作成後、当該計画における目標の達成状況を確認する。また、利用者等からの要請等に応じて、販売した福祉用具の使用状況を確認するよう努めるとともに、必要な場合は、使用方法の指導、修理等(メンテナンス)を行うよう努める。

◆モニタリング

モニタリングについては、これまで「努力義務」であったものが「義務化」されるということで、かなり敏感に捉えている方も多いと思います。

モニタリング実施時期の明確化として、
(中略)福祉用具貸与計画の実施状況の把握(モニタリング)を行う時期等を記載した福祉用具貸与計画を作成しなければならない。

またモニタリング結果の記録、介護支援専門員への交付として、
福祉用具専門相談員は、モニタリングの結果を記録し、当該記録をサービスの提供に係る居宅サービス計画を作成した指定居宅介護支援事業者に報告しなければならない。

居宅サービス計画を作成した介護支援事業者に【報告しなければならない】となっています。
モニタリングが義務化というのはこういう部分が反映されたものと考えられます。

今回の介護報酬改定で主要なものをピックアップしただけでも、これらのポイントが挙げられます。

いかがでしょうか?

みなさまにとって、

「まあ、想定の範囲内で許容できるレベルかな。」

というのか、

「いや、これはけっこうキツいな~!」

というのか。

これら以外の点でも、ジワジワと事業環境に影響を及ぼすものがありますので、次はそうした点についても触れていきたいと思います。

ポイント2:ほかにも業界企業に影響が考えられること

2024年の介護報酬改定について、主要なものについてざっと概観してきました。

それら以外に福祉用具レンタル会社に影響を与えそうなものとして、次の2点を挙げさせていただきたいと思います。
◆上限価格の再設定(2024年4月~)
◆財務諸表の公表義務化

これらについても、ざっと見ていくようにしましょう。

◆上限価格の再設定(2024年4月~)

定期的に見直し、公表される福祉用具の全国平均貸与価格および上限価格。
今回も2024年4月以降分が厚生労働省より公表されています。

いくつかの社長さんから、

「今回はメインどころの商品の価格が見直しになるからたいへんだ…」

「試算してみたところ、けっこうな売上ダウンになりそう…」

というお声をお聞きしています。

実際に今回公表されているリストを見てみると、冒頭に次のような文言が記載されています。
※令和6年4月貸与分より、新たに以下4,243商品につき、全国平均貸与価格・貸与価格の上限が適用されます。

4,243商品、、、

ほう、なかなかのアイテム数ですね。

さらにその内容を見てみると、よく見る商品がズラリ!

福祉用具の詳しい商品についてはまるでド素人の私が見ても、よく聞く、よく見る商品が並んでいます。

やっぱり多くの会社さんにとって、メインどころの商品の価格が見直しになるというのは本当のところなんですね。

◆財務諸表の公表義務化

2024年度からすべての介護事業者を対象に、財務諸表の公表が義務化されるというものです。
厚生労働省の資料を見ると、次のような記載がされています。

Ⅱ.介護サービス事業者の財務状況等の見える化

(中略)
▶各事業所・施設に対して詳細な財務状況(損益計算書等の情報)の報告を義務付け

複数の事業をやられているところは、介護サービスごとに、また拠点ごとに財務諸表を提出しなければならないということになるようです。

例えば、会社全体ではいくつかの事業をやっている、そのなかに福祉用具レンタルがあり、2拠点でやっているという会社さんがあったとします。
全体の決算書ではダメで、そのなかから福祉用具レンタルだけ部門損益を抜き出して、さらにそれを拠点ごとに分けて提出しないといけないと、そういうことになるようです。

もともとから部門損益×拠点損益を細かく出しているという会社さんは何ら問題はないと思います。
一方で、会社としてまとめた決算しか出していないという会社さんはたいへんです。

経営を適正にしていこうと思うと、月次で部門別かつ拠点別に財務を見ていくというのは当然というか、とても良いことだと思います。
とはいえ、これまでまったくやっていなかった会社さんにとっては事務負担が激烈に重たくのしかかってくることになるのは間違いないでしょう。

こうしたことも、さらにジワジワと福祉用具レンタル会社の運営を圧迫していくポイントになるのではないかと思います。

ポイント3:この先業界はどうなっていくのか?その対策は?

これまで見てきました介護報酬改定、上限価格制度の公表、財務諸表の公表義務化など、これらのことを考えると、

業界はますますパワーゲームになっていく

ように感じます。

例えばモニタリングの義務化で考えると、ある程度の規模になるとモニタリング専門要員を配置して義務化以前からモニタリングをきちんとやっている会社さんもあるでしょう。
一方で小規模な会社さんにとってはモニタリング専門要員など置けるわけもなく、営業メンバーが日々の活動の合間にモニタリング消化をしているという状態なのではないでしょうか。
モニタリングが追いついているかどうかというと、決して大きな声では言えないという状況のなか、それが【義務化】となると組織のあり方や業務の内容も大幅に見直さないといけなくなるでしょう。
そちらに時間を取られる結果、営業成果に影響が出るのは必至とみていいと思います。

小規模事業者にはとても厳しく、もはやサービスを維持することすら困難になることも考えられるかもしれません。

例えば財務諸表の公表義務化についても、もともと経営体制がしっかりしている会社さんにはふつうのことかもしれません。
一方で小規模な会社さんにとって、通常の決算すらも税理士さんに任せっきりというところもあると思います。
今回提出しないといけない財務資料は税務上の決算書とは別のもの、仕訳をやりなおして、計算をやりなおして、まとめ直さないといけなくなるでしょう。

小規模事業者には、これまたとても厳しく真綿で首を締めるようなものと感じられるかもしれません。

事業環境からしてパワーゲームの様相を呈してくる上、力のあるところはより一層その力を増していくようになるでしょう。
さらなる価格勝負を仕掛けてくるかもしれないし、人材の引き抜きなど争奪戦を繰り広げてくるかもしれません。
その体力を活かして、他社がジワジワと削られていくのを待ち、生き残りを図るのは当然のことでしょう。

そんな、ともすると消耗戦に入ってきつつあるようにも思えるこの業界で勝ち残っていくには何が重要なポイントになるでしょうか。
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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
チーフ経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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