福祉用具レンタル業 なぜ生産性向上が必要なのか? ~前編~

いつも福祉用具経営.comをご覧いただき、まことにありがとうございます。
みなさまはふだん【生産性】についてどの程度意識をされていますでしょうか。
売上や利益、利用者数といった指標は意識されていると思いますが、生産性(一人あたり粗利)はあまり目を向けてこなかったという方もいらっしゃるかもしれません。
実は今後、福祉用具レンタル業界では生産性を高めていかないと、極端には事業の存続すら危ぶまれるような事態も起こりえると考えています。
今回のコラムでは、なぜ生産性向上が必要なのか?というテーマでお送りしていきたいと思います。

突然ですが、みなさまの会社は次の5つのうち、どの程度当てはまりますでしょうか?
一つ、毎日2~3時間の残業は当たり前
二つ、若い社員を入れてもちょっと覚えた頃に退職
三つ、募集をかけてもぜんぜん人が集まらない
四つ、社長がまだ担当をもち現場に出ている
五つ、個人商店の集まりで協力や連携とはほど遠い

いかがでしょうか。けっこう福祉用具レンタル会社「あるある」なのではないでしょうか。

◆毎日2~3時間の残業は当たり前
 ⇒夕方帰社して事務処理しているのに、どうやって残業なしでやれるの?

◆若い社員を入れてもちょっと覚えた頃に退職
 ⇒せっかく苦労して仕事を教えたのに、またイチから新人に教え直しか・・・

◆募集をかけてもぜんぜん人が集まらない
 ⇒ハローワークはもちろん、求人媒体にもそれなりに掲載しているのに何で来ないの?

◆社長がまだ担当をもち現場に出ている
 ⇒社長じゃなきゃダメっていうお客さんがいるから、止めるわけにいかないよね…

◆個人商店の集まりで協力や連携とはほど遠い
 ⇒みんなそれぞれがそれぞれのやり方でやっている。これまで何年もそうしてきたからまあいいよね・・・

しつこいようですが、それぞれの項目でこんなボヤキの声が聞こえてきそうです。
福祉用具レンタル会社のよくありそうな実態を列挙したわけですが、この状態を放置しておくと、今後とても厳しい事態に直面することになりかねません。
なぜそうなるのか、福祉用具レンタル業界の事業環境をざっくり整理してみたいと思います。

1.業界規模は成長を続けている

次のグラフを見てください。

これは厚生労働省の「介護保険事業状況報告」をもとに作成した、福祉用具貸与の給付費の年間金額を時系列に見たものです。
2006年にベッドや車いすなどの軽度者貸しはがしがあり、いったんはガクンと下がったものの、その後一貫して拡大を続けています。
2002人には1092億円であったものが、2019年には3494億円となり、およそ3.5倍に拡大しています。

年々成長率としては鈍化してはいるものの、まだまだ成長しているのが福祉用具レンタル業界のマーケットであるということになります。

2.人材採用の環境は厳しい

今度は次のグラフを見てください。

これは有効求人倍率をグラフにしたものです。
有効求人倍率とは、1名の求職者に対してどのくらいの採用ニーズがあるのかを示した指標であり、1.0倍であれば求職者1名に対して1社が求人、2.0倍であれば求職者1名に対して2社が求人という具合になります。
福祉用具レンタル会社で採用の対象となりそうな職種を見てみると、
【介護サービス】3.5倍 ⇒ 求職者1名に対して3.5社が求人
【営業】1.7倍 ⇒ 求職者1名に対して1.7社が求人

わざわざこんな数値を見せられなくても採用が厳しいというのはみなさまも日々感じておられるかもしれません。
日本の労働人口は年々減少していくことが予測されており、今後も採用環境は大幅に改善することはあまり考えられないでしょう。
人材採用の環境は厳しい状況が続くと捉えておいた方がよさそうです。

3.業界内の業績格差はますます広がる

またまた次の2つのグラフを見て下さい。

一つ目のグラフは福祉用具貸与事業所数と、福祉用具専門相談員数の推移を時系列で表したものです。
ところどころ、データの取り方が変わっていたりしてグラフが分断されていますが、2018年から2020年にかけて事業所数は減少、福祉用具専門相談員はほぼ横ばいとなっています。

二つ目のグラフは福祉用具専門相談員数を福祉用具事業所数で割って、1事業所あたりの専門相談員数を出したものです。
1事業所あたりの専門相談員数は継続して上昇を続けています。
これらが示すところは1事業所の規模が大きくなる一方、事業所数全体は減少している。
優勝劣敗が明確となり、強い事業所はますます業績を伸ばしていると捉えることができるのではないかと思います。

これらのことをまとめると、今後予想されることとして以下の4点があげられます。
■業績は伸びる(市場は引き続き成長)
■力のあるところに業績が集中、より業務過多となる
■人手不足の状況は変わらない
■さらに他業種と比べて人材採用の難しさ

業績が伸びるからといって、人をどんどん投入して仕事をこなしていくというこれまでの常識が通用しなくなるかもしれません。
限られた人材、陣容でこれまで以上に生産性を上げ、より効率よく仕事を回していくような会社が今後の時流を捉えた新たな福祉用具レンタル会社のスタイルと考えられるのではないでしょうか。

さて、今回のコラムでは「福祉用具レンタル業 なぜ生産性向上が必要なのか? ~前編~」として、まずは福祉用具レンタル会社のおかれた事業環境を整理してみました。
後編では生産性を上げていく上での考え方、会社をどう変革していけばよいのかについてお伝えしたいと思います。
ぜひご期待ください。

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
チーフ経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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