福祉用具レンタル業 成長ステージを上げる組織変革と分業化

営業がみるみる活性化して成果もどんどん上がってきた!

営業がほぼすべての業務を担い、移動中も電話連絡に追い立てられ、見るからに疲弊していた頃と比べると各段に空気が変わったとある社長は言います。

ある時点まではマンパワーで引っ張れたとしても、さらにステージを上げ、成長していくことを考えると会社の仕組みそのものを変えていかないと厳しくなるのだと思います。

福祉用具経営を進化させる組織変革と分業化。今回のコラムはそんなテーマを考えてみたいと思います。

ポイント1:分業化で営業成果がグンと上がる

ここ2年くらいでしょうか、営業とバックサポートで役割を分けながら業績を上げるところが目立つようになってきました。
もとはというと営業が、営業活動から納品や追加、引上げまでやって、夕方帰社したら発注作業や書類作成をやるというのが、ザ・福祉用具営業のスタイルだったと思います。

福祉用具&リフォーム経営研究会の会員企業でも、そうしたスタイルに限界を感じ、営業は営業活動にウェイトを置く一方で、バックサポートを強化して利用者対応を専門的に行う部隊を設ける会社が増えてきています。

例えば関西で利用者数5000名を抱える福祉用具レンタル会社。

エリアを細かく分けてそれぞれに営業スタッフを配置する体制でした。
営業スタッフといっても、営業活動に力を発揮する方もいれば、正直なところ営業にはあまり向いていない方もいる状態でした。
当然、営業に適正があるメンバーは成果を上げてくる一方、不向きなメンバーは営業成果は頭打ち・・・

あるとき、2つのエリアをくっつけて2人で1つのペアを組む体制を試験的に導入してみました。
すると2人でそれぞれのエリアを担当していた頃より明らかに新規件数が増える結果となりました。
おまけにそれぞれのメンバーが適正を活かして動くので、イキイキと水を得た魚のように動くようになったそうです。

また、関東・中部・関西にまたがり10拠点以上を展開する福祉用具レンタル会社。

1拠点あたりは1000名程度の利用者数を抱えています。
もとは営業部隊と、モニタリング部隊を置き、モニタリング部隊はその名の通り「モニタリング」を実施してもらうのが役割でした。
モニタリング部隊の役割を拡張し、納品・契約・追加・交換・引上げまでやってもらう【フィッティング】部隊としました。
フィッティング部隊にバックサポートを担ってもらうことで、営業部隊はケアマネに対する営業活動に重きを置くように変革しています。

変革前の1か月あたりのケアマネ面談件数が1人あたり40回前後だったものが、体制を変えて以後は70~80回にまで上がっています。
それに伴い新規獲得件数や住宅改修の受注数も明らかに上がっていっています。

業界のライフサイクルが進んでくると、営業のあり方もより洗練されたものへと進化していきます。

例えとして適切かどうかはさておき、プロ野球の世界でも少し前までは先発ピッチャーが9回まで完投するのが当たり前という考えがありました。
現在の流れは、先発ピッチャーは6回か7回、球数は100球ちょっとまで投げれば先発としての役割は全う。
あとはセットアッパーがその流れを受け継ぎ、最後はクローザーが締めてフィニッシュという形に替わってきています。

そんな風に、営業が何から何までやるという形から、営業は営業活動に専念し、バック業務はフィッティングが専門的に対応する。
そうした分業スタイルへと変えているところが、より高い営業成果を上げ、さらに高いステージへと上がっていっているのです。

ポイント2:フィッティングと事務のサポート体制を考えよう

分業体制を考えたときに、フィッティングによるバックサポートと、事務スタッフによるバックサポートの両面の体制を考えていきたいものです。

まずはフィッティングのサポート体制から。

前述したように、フィッティング部隊は社外でのサポートの役割を担います。
納品・契約・追加・交換・引上げ、また必要に応じて担当者会議やカンファレンスも対応します。
従来の一般的な福祉用具レンタルの営業がやっていたことを、ほぼフィッティングが担うイメージです。

それでは営業は何をするのか?
営業メンバーはケアマネに対する営業活動と、新規利用者の対応に集中的に対応します。
新規利用者への訪問、現場確認、選定・提案を、これまでよりも質を上げて実施していきます。
またフィッティングとも連携しながら、新規・既存ともに利用者での動きをこまめにケアマネに訪問報告していきます。

次に事務スタッフのバックサポート体制について。

まずバックサポートの初期段階としては、発注や書類作成など、従来は営業スタッフが帰社後に実施していた業務をカバーすることだと思います。
出先からチャットなどを使って事務スタッフに作業を依頼し、日中の時間に発注・書類作成が完了している状態を目指します。

前述した関西の会社では利用者のデモ確認アポを事務スタッフが実施しているといいます。
デモ中の利用者がリストアップされていて、事務スタッフが定期的なサイクルでその利用者宅に架電していきます。
デモ確認をしつつ、OKであれば契約に行く日のアポを取る、デモNGであれば交換または引上げに行く日のアポを取る。
そんなサポートまでやっています。

従来は営業がやっていたデモ確認、例えば月の前半にデモ納品してふつうに1週間でデモ確認をして契約すればその月からまるまるひと月請求できるところ。
忙しさにまぎれてぼやぼやしていて、25日くらいにデモ確認がずれてしまったらどうでしょう。
もしかすると翌月から請求となり、1ヶ月分のレンタルが飛んでしまうかもしれません。
「たまたまその利用者さんだけ」「たった1ヶ月」、そんなルーズな対応の積み重ねが業績を停滞させてしまうのです。

フィッティングと事務スタッフのバックサポート体制。

本気で取り組めば、びっくりするくらいガラっと業績を上げることにつながることでしょう。

ポイント3:利用者1000名での経営判断がその先の成長の分岐点

ここまで福祉用具レンタル業の分業化と組織変革について、フィッティングや事務スタッフのサポート体制の実例を挙げながらご説明してきました。

「分業化していくのが良さそうなのはわかったけど、どのくらいのタイミングで取り組めばいいんだろう?」

こうした組織変革のタイミングはだいたい利用者1000名規模がめやすになると思います。

利用者数が数百名クラスだと営業利益が黒字になるかどうか覚束ない状態です。
そんな状態でサポートスタッフを増員すると固定費の増加となり、一気に赤字水準に突っ込んでいってしまうでしょう。

利用者1000名クラスまでくると、月次黒字はしっかり出せるようになると思います。
サポートスタッフを増員すると当然ながら損益は厳しくなります。
もしかすると損益はトントン、これまでの黒字体質が崩れてしまうかもしれません。

ここが経営判断の分岐点。

いまのままの体制で利益が出る状態ではあるものの、やがて営業が忙しくて首が回らなくなり、業績の停滞を迎えてしまうのか。
利用者3000名とか、5000名とか次のステージを見越した体制をつくる、いわば先行投資を仕掛けていくのか。
どこまでの会社にしたいのか、経営者のビジョンによって変わってくるものでしょう。

まだまだ伸ばしていきたいと考えるのであれば、利用者数1000名規模の段階で分業化を見越した組織変革に取り組んでいくとよいでしょう。

営業スタッフに投資するのか、バックサポートに投資するのか。

いかに会社を成長させつつ生産性を上げていくか。

経営者のウデの見せどころですね!

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
チーフ経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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