福祉用具レンタル 1人あたり月間売上400万円超の営業部隊はどうやって生まれたのか!?
みなさまの会社の営業の生産性はどのくらいでしょうか?
営業1人あたりの月間売上はまあまあの水準の会社で250万円~300万円いけば高い方ではないでしょうか。
レンタル200~250万円、住宅改修と販売を加えてプラス50万円~80万円といったところです。
それも社内でもよく上げてくる営業はそれくらいで、新人~一般なら100~150万円になってしまうというのもよくある話です。
「在宅営業だけだったらぜったいに今のようになっていないですね。。。」
東洋ケアサービス株式会社様では、営業スタッフが38名おり、1人あたり平均で月間売上400万円を軽く超えているといいます。
先ほどのお言葉は細野社長がよくおっしゃっていることで、もし法人営業をやっていなかったらごくふつうの福祉用具レンタル会社と同等水準だったと言います。
今回のコラムでは、東洋ケアサービス様のように非常に生産性が高い営業部隊はどうしてできていったのか、その秘訣を追っていきたいと思います。
ポイント1:何をどう売ったらそんなに生産性が上がるのか?
一般的に営業の生産性は1人あたりの担当利用者数に大きく影響を受けます。
業界の平均的な水準だと、1人あたり150~180名という会社が多いと思います。
平均単価が1万円だとすると、月間売上は150~180万円になりますね。
そこに住宅改修や特定福祉用具の販売が乗ってくるわけですが、
住宅改修 30万円
特定福祉用具 20万円
といったところでしょうか。
レンタル売上と合わせて、200~230万円というのが平均的な営業1人あたりの売上だとします。
粗利ベースで考えると、ざっくり50%と考えて営業1人あたり100~115万円というところでしょう。
一方で、東洋ケアサービス様の営業1人あたり粗利は200万円と、一般的な水準の2倍の生産性を叩き出しています。
同じようにどうやってそんな高水準の粗利を稼いでいるのか分解していってみましょう。
全体の利用者数を営業の人数で割ると、1人あたりの担当利用者数は180人と出てきます。
これだけ見ると業界平均と変わりない水準ですね。
平均単価は同じく1万円として、レンタル売上は180万円と想定しましょう。
住宅改修と特定福祉用具が少し多くて、
住宅改修 50万円
特定福祉用具 30万円
これでレンタル売上と合わせて260万円となります。
さらにここに病院・施設向けの法人営業が付加されます。
法人営業 140万円
在宅利用者向けの売上260万円に、法人営業の売上140万円を加えて1人あたり月間売上400万円となります。
粗利率は同じく50%と想定すると、営業1人あたり粗利が200万円になるという計算になります。
細野社長の言葉
「在宅営業だけだったらぜったいに今のようになっていないですね。。。」
にあるように、現在の高い生産性は法人営業をやっているからこそということになります。
さらに、なぜ法人営業を重要な要素として考えているかというと、
「ゆくゆくは営業1人あたり粗利を500万円にまで高めていきたい。」
「法人営業を仕掛けることで、在宅営業にも有利に働くやり方がある。」
ためだそうです。
営業1人あたり粗利500万円というと、年間6000万円という驚愕の水準です。
さらに法人営業と在宅営業がリンクするというのは、とても気になるところです。
このあたり、さらに深掘りしていきたいと思います。
ポイント2:病院・施設向けの営業の進め方とは?
東洋ケアサービス様には病院・施設を攻略するさまざまな手法・ノウハウがあるのですが、そのうちの一つをご紹介したいと思います。
病院・介護施設を攻略する際に「施設開業支援」という考えでターゲットとの接点をつくっています。
介護施設をオープンされる際に必要となる物品は、複数の業者から購入するのではなく東洋ケアサービスに言えば、福祉用具・医療器具・家具・事務機器・厨房設備・レンタル・おむつなど消耗品・調剤薬局など一括で揃えられますよという提案です。
今回はその詳細はさておき、介護施設のオープンに絡むお付き合いをしているということで、施設のパンフレットを預かり配って歩くとともにケアマネを積極的に内覧会に連れていく動きをするそうです。
介護施設さんからすると、単に「物品を納入する業者」という立場ではなく、開業後の入居を後押ししてくれるありがたい存在という立ち位置になります。
ケアマネにとってもパンフレットを渡してくれたり内覧会に連れて行ってくれたりで、単に「案件くれくれ営業」ではなく、担当する利用者のプランにおいて選択肢を広げてくれる存在という立ち位置になります。
さらに面白いのは、施設に入居される方でも、ケアマネがついていないケースです。
例えば、遠方から家族の近くの施設に入居することになるケースなどがイメージできるかなと思います。
施設さんから「東洋さん、ケアマネがついてない利用者さんがいるんだけど、誰かいい人いないですか?」という相談を受けます。
そうすると自身の付き合いのあるケアマネに紹介することで、ケアマネ付けもやっていくそうなのです。
施設さんからの相談にも対応することになり、ケアマネもプランが増えることになり、一挙両得です。
ここでちょっとしたミソなのは、独立して居宅を開いて間もないケアマネとか、異動してプラン数がまだ少ないケアマネに紹介していくのだそうです。
そうすることで、これからまだまだプランを増やしていきたいケアマネに対して、いい感じのお付き合いをしていくことができますね。
そんな動きをしていると、内覧会に連れて行ったり、利用者を紹介したりしたケアマネは、新規の案件があるとその営業さんに声をかけてくれる流れが自然とできていくといいます。
単なる「案件くれくれ営業」とはまったく異なる立ち位置での営業活動ができます。
このように法人営業として「施設開業支援」の動きを、その一連の流れでケアマネとの関係をつくり在宅営業にもプラスの効果を発生させる。
そんなお話を聞くと、決して在宅営業と法人営業は別物ではないんだなと、私自身の考えをあらためさせられます。
ポイント3:法人向けレンタルで営業の幅が一気に広がる
東洋ケアサービス様で面白いポイントの一つが法人向けレンタルの取り組みです。
東洋ケアサービス様のトップ営業の方にお話しを聞くと、この法人向けレンタルで「法人営業の幅が一気に広がった」そうです。
「病院とか施設って、ベッドや車いすを何台も一括で安く買い叩くんじゃないの?」
私もそう思っていました。
もちろん開業されるときには、開業の投資予算の中でそうした買い方をされるケースが多いと思います。
ところが、開業してある程度の期間が経過してきたときに、
・経年の使用で劣化した福祉用具を買い替える必要がある
・利用者に合わないものは別のアイテムを買い足す必要がある
・修理やメンテナンスができず、使えない用具が物置に積み重なっている
そんなケースが様々な病院・施設で発生しているそうです。
この場合は何台も一括で購入するというより、数台をポツポツ追加購入するという感じになります。
もともと予算を取っているわけではないので、新たに購入稟議を上げて決裁していかないといけません。
開業時の設備・備品は社長や理事長マターで予算を取っていますが、追加や入れ替え購入となると担当者から稟議を上げていくことになり、そのあたりも購入のハードルになると想像できます。
一方で、そうしたケースにレンタルを提案できるとします。
支払いは月々のレンタル料でいいので、担当者さんや事務長さんの権限の範囲内で決裁できます。
何より1台から入れることができるので、手軽に導入が進みます。
「でも毎月レンタル料を払っていたら、結局買った方が割安になるよね。」
確かに利用期間によっては利用料を払い続けるよりも、購入してしまった方がトータルの支払金額は安くなるケースは大いにあり得ます。
それでも施設さんによっては、入居者1名あたりの入居費用や介護収入などと比較して月々のランニングでペイするならその方が判断しやすいと考えるところもあるそうです。
そんなこんなで法人向けレンタルは介護施設に対しての選択肢の幅を広げ、より一層「法人営業」が進んでいくこととなったのです。
「ちょっと待って、法人レンタルだと介護保険は使えないんだよね?事業者側はそれで合うの?」
レンタルビジネスはレンタル商品を自社購入し、月々のレンタル料で回収していくビジネスです。
介護保険のレンタルは、そもそも介護保険の仕組みによって相当の、ふつうは考えられないくらいの有利な設定になっていると言えます。
おそらく仕入金額からすると、概ね1年以内に回収できてしまうのが介護保険のレンタル商品ではないかと思います。
一方で法人レンタルは介護保険の仕組みの枠外となるため、ごくふつうのレンタル料金で設定します。
それでもおおよそ3年くらいで回収できてしまいます。
回収期間と耐用年数を考えると投資に対する利回りは10%近くの計算となるそうで、細野社長曰く、
「株とか土地とか、他のどんな投資案件と比べても楽勝で利回りがいい。」
とおっしゃっています。
介護保険と比べると確かに不利ではあるものの、もっと広い視点で見ると大いに利益を生むビジネススキームであるというのが細野社長の考えです。
法人営業を伸ばしていく上でカギを握る「法人向けレンタル」。その詳細はぜひとも踏み込んで聞いていきたいところですね。
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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
チーフ経営コンサルタント
入江 貴司
【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。
⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp