福祉用具レンタル業 営業リーダーに必要な3つのスキルを鍛えよう!

自分で目標を設定しそれを実現する作戦は立てられていますか?

全国に福祉用具専門相談員は3万人以上いるといわれますが、そのなかで自律的に目標設定して、そのための作戦を立て、実行しているのはごくごく一部の方にとどまるのではないかと思います。
多くは会社から言われた通りに動く、いやケアマネや利用者さんから言われたことをこなすのが仕事と思っている方もいらっしゃるかもしれません。

一方で、営業が自ら現状を把握して目標を設定し、その目標を達成できるだけの行動計画まで立ててくれるとしたらいかがでしょうか。
そんな自立的な営業部隊であれば、この先どんどん勝っていけるように思いませんか?

今回はそうした現状把握力・目標設定力・作戦立案力を高めるためのケーススタディについてご紹介していきたいと思います。

ポイント1:営業リーダーに高めてほしい3つのスキル

営業メンバー、とくに営業のリーダーさんには自立的に考え、動いてもらいたいところではないかと思います。
経営者にとっては、そうした動きをしてもらえれば、こんなにうれしいことはないと思いますし、
営業メンバー/リーダーさんにとっては、自身のスキルを高めて、キャリアを高めていく上で身に着けていければ最高に人生が楽しくなると思います。

そうした観点で、高めてほしいスキルを3つ挙げさせていただければと思います。

スキルその1:現状把握力

現状を冷静にかつ客観的に把握する力です。
まずは現状把握ができないと、その後の対策を立てることもできません。

数値面では、損益の現状把握ができることだと思います。

・営業利益はどのくらい出ているのか?黒字なのか、赤字なのか?
・売上は損益分岐点を超えているか?
・粗利率は適正な水準か?
・販管費は事業規模に対して適正な水準か?

こうしたことから、現状を正確に把握し、課題を見つけることができる力があれば非常に頼もしいと思います。

「それって、社長がやってることじゃない?」

と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、おそらく利用者数1000名を超える事業所のマネージャーさんであれば、上記の現状把握はふつうにできると考えた方がいいと思います。

もし、利用者数がゆうに1000名を超えていて、それでも数字が読めずにイチ営業としての働きしかさせていないということであれば、
それは社員の役割とか、社員教育を根本的に見直した方がいいかもしれません。

スキルその2:目標設定力

現状把握ができて課題を見つけることができれば、次はそれを改善してあるべき姿を描く目標設定のスキルを備えてほしいです。

・損益分岐点に到達する売上高
・目標とする営業利益を実現する売上高
・その売上に至るレンタル利用者数
・目標を実現できるレンタル・住宅改修・販売の売上高
・目標の売上・利用者数の実現時期
・月次の新規獲得数

こうした部分は現状把握をもとに設定してほしい目標数値となると思います。

スキルその3:作戦立案力

立てた目標をいかに実現していくか?
どういう作戦で臨むのかというのは、もっとも腕が試されるところだと思います。

・目標レンタル利用者数を実現するにはどういうアプローチをしていくか?
・住宅改修を上げていくにはどういう打ち手が必要か?
・特定福祉用具を上げていくにはどういう打ち手が必要か?

こうしたことを具体的に作戦を立てることが、作戦立案力ということになります。
いろんな作戦のオプション(選択肢)をもちつつ、自分たちに合った作戦を立て、実行していくことができればきっと目標は達成されていくことでしょう。

この時に注意しないといけないことが一つあります。

お仕事をしていると「やった方がいいこと」は無数にあります。
ところが、「やった方がいいこと」を全部やっていても決して業績が上がることはありません。
なぜなら全部やろうとすると、実行が徹底できないからです。

確実に、かつ徹底して実行しようと考えると、やることは絞り込むことが重要です。

「あれもこれもやって」

と言われると消化できないですが、

「とにかくこれだけやろう!」

と言われると実行できるものです。

こうしたことも踏まえて作戦を立てていけるといいと思います。

これまで見てきた現状把握力・目標設定力・作戦立案力ですが、少し小難しく感じられたかもしれません。
実はこういうことは具体的なケースで考えることで、案外カンタンに捉えることができるものです。

次のポイントでは、具体的なケーススタディをもとにこれまで見てきた3つの力について腕試しをしていきたいと思います。

ポイント2:3つのスキルを鍛える具体的ケーススタディ

それでは、具体的なケーススタディを進めていきましょう!

<プロフィール>
地方都市(人口25万人)に拠点をおく福祉用具レンタル事業所:A社
利用者数は1000名、これからの成長を見越してスタッフの採用を行った結果、固定費がかさみ月次▲50万円程度の営業赤字となっている。
営業は6名おり、下記の概要となっている。
aさん(店長):利用者数250名・月間獲得数9件
bさん:利用者数220名・月間獲得数8件
cさん:利用者数170名・月間獲得数6件
dさん:利用者数160名・月間獲得数4件
eさん(新人):利用者数110名・月間獲得数3件
fさん(新人):利用者数90名・月間獲得数2件

【売上・利益の概要】
レンタル売上:1100万円
住宅改修売上:250万円
販売売上:150万円
合計売上:1500万円
粗利金額:700万円
人件費:500万円
その他経費:250万円
販管費合計:750万円
営業損益:▲50万円

社長としては成長のための先行投資としてスタッフ採用を行ったものの、まずはできるだけ早く月次黒字化させたいと考えている。

<問題>
①社長の希望である月次黒字を達成するための売上・利用者数、その達成時期を設定してください。(全体の粗利率は変わらないものとする。)
②上記①の売上金額を構成するレンタル・住宅改修・販売のそれぞれの売上金額を設定してください。
③これらの目標が達成できるよう営業の作戦を検討してください。

さて、上記の問題①~③について実際にケーススタディとして検討してみてください。

ポイント3:勝てる作戦を自ら考え、実行しよう!

ケーススタディに取り組んでみられて、いかがだったでしょうか。

前提としてビジネスの世界は学校ではないので、絶対的な「正解」はありません。
いろんな目標設定があり、いろんな作戦があっていいと思います。

「正解」はないという前提で、①~③の例を下記したいと思います。

①社長の希望である月次黒字を達成するための売上・利用者数、その達成時期を設定してください。(全体の粗利率は変わらないものとする。)

売上高:1610万円
利用者数:1050名
達成時期:6か月後

販管費合計が750万円、月次黒字ということは粗利金額が750万円以上であることです。
粗利率が46.6%ということは、売上高は1610万円あればいいということになります。
いますぐにその水準まで上げるのは厳しいとしても、遅くとも半年のうちには月次黒字にまで持っていきたいところです。
現状の1000名から、半年間で純増+50名することを想定して利用者数は1050名としています。

②上記①の売上金額を構成するレンタル・住宅改修・販売のそれぞれの売上金額を設定してください。

レンタル売上:1155万円(利用者数1050名×平均単価1.1万円)
住宅改修売上:280万円
販売売上:175万円
合計売上:1610万円

レンタル売上は利用者数1050名で、平均単価1.1万円とすると1155万円となります。
住宅改修は現在の250万円から30万円アップして280万円、販売は現在の150万円から25万円アップして175万円としました。

利用者数については、現在の1000名に対して解約率3%と想定すると30件の解約が発生します。
aさん~fさんの新規獲得数を合計すると32件になり、現状の月間純増+2件だと半年後の1050名は実現できません。
営業全体の合計新規獲得数を40件にまで高めることも必要になってきます。

③これらの目標が達成できるよう営業の作戦を検討してください。

・レンタル獲得数を増やすために営業の行動量を増やす。ケアマネに対する面談数を増やす。
・特に攻撃力のあるaさん、bさん、cさんは面談数を現状の2倍に高めてもらう。
・一方でdさん、eさん、fさんはaさん~cさんのサポートを行うことで、利用者対応の経験値も高める。
・新規の利用者訪問の際には、主要生活動線(トイレ・お風呂・玄関・浴室)を併せて確認し、危険個所のチェックと必要に応じて提案を行う。
・営業車にはデモ品として手すり・入浴補助用具を常備車載しておき、必要に応じてデモ設置できるようにする。

全員が漫然と活動するよりも、攻めの営業活動をするメンバーとバックアップに回るメンバーでメリハリをつけて動いた方が攻撃力が上がるケースがあります。
この場合、aさん(新規9件)、bさん(新規8件)、cさん(新規6件)と、相対的に新規獲得力があると思われることから、3人には営業活動の頻度を高め新規獲得に特化した動きをしていただきたいと思います。
一方で、納品・引き上げ・交換・モニタリングといったバックサポート業務は、dさん、eさん、fさんに担ってもらいます。
特に新人であるeさんとfさんには納品などの業務で集中的に経験を積んでもらい、利用者対応スキルを磨いてもらいたいと思います。

住宅改修と販売については、必要に応じてしっかりと提案することが重要になります。
何もないところで提案したところで単なる「押し売り」にしかならないですが、トイレやお風呂などの生活動線を訪問の際に、ついでに確認することで危険や不安な個所をチェックすることができます。
その際に提案するとともに、車載のデモ品をすぐに設置することで即時成約へと誘導していく動きもしていきたいところです。

こんな風に問題①~③について考えてみました。
先ほども書いたように、これには絶対的な「正解」はありません。
あくまでひとつの回答例と捉えていただき、みなさんのアイデアを出していただければと思います。

今回のケーススタディは本コラムをお読みいただいた方がご自身でやってみてもいいですし、社内のメンバーでグループディスカッションとして検討していただいてもいいと思います。
大切なことは、現状把握力・目標設定力・作戦立案力を鍛えるものであるという意識をもつこと。
それらが難しいものではなく、具体的なケースの検討を行うことで身近に、自然と考えられるものだという捉え方をしていただくことだと思います。

ただ漫然と日々の営業をこなすのではなく、

現状を正しく捉え、

目標を設定し、

その実現に向けた作戦を立てて動いていきましょう!

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■ 執筆者紹介
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株式会社 船井総合研究所
リフォーム支援部
チーフ経営コンサルタント
入江 貴司

【プロフィール】
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルと
シニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する
専門コンサルティングを進める。
商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制
づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

⇒ 入江 貴司 への経営相談は、コチラまで
E-Mail:takashi_irie@funaisoken.co.jp

この記事を書いたコンサルタント
入江 貴司
入江 貴司
入江 貴司

1976年大阪府生まれ。
大阪大学経済学部卒業後、大手工作機械メーカーに入社。
シニア向けビジネスの立ち上げを専門に手がけるなかで、福祉用具レンタルとシニアリフォームを掛け合わせた「セット提案モデル」を開発し業界に対する専門コンサルティングを進める。商圏内一番事業所に向けた戦略づくり、マーケティング・営業支援、組織体制づくりなど業界企業のビジネスモデル化を強力に推進する。

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